口の中にできるガンは「口腔(こうくう)ガン」という。その中の50~60%を占めるのが、今回取りあげる「舌ガン」。その名のとおり、舌にできるガンである。

初期には無症状だが、そのうちに「舌の違和感」「しこりの自覚」「しみる感じ」が出てくる。また、口内炎のようになってしみたり、潰瘍ができることもある。ほとんどが舌縁(ぜつえん)である。

事実、口内炎と思って放っておいて受診が遅れるケースもある。口内炎は一般的には1週間、長くても10日程度で治ってしまう。なのに、その口内炎と思っているものが2週間以上も続くようであれば、口内炎ではない、と思って耳鼻咽喉科や頭頚(とうけい)部外科を受診すべきである。

そのガンが大きくなってくると、潰瘍症状のみならず、痛みがしだいに強くなる。潰瘍部分をティッシュでこすって血が付着するようであれば、やはりすぐに耳鼻咽喉科や頭頚部外科へ――。

これ以外に、舌ガンの前ガン症状といわれる「白斑症」という舌の病気がある。ピンク色の舌の一部分が白くなってくる。この場合は、経過をしっかりチェックして、ガンに進行するようであれば治療になる。出血したり、シコリができたり、白い部分がデコボコしてきたり、といった変化である。

舌ガンはさらに進むと、「物が食べにくくなる」「言葉が話しづらい」「口が開きにくい」「リンパ節が腫れてくる」といった症状になる。口の中、とりわけ舌の変化だから早期に気付くと思っている人がほとんど。だが、実際に受診する人は、進行ガンの段階になってから、という人が多い。

また、発症のピークは50代だが、20代の若年層にもみられるので、十分な注意が必要である。

一般に治療は「手術」「放射線療法」「化学療法」。どの治療を選択するかは、患者と主治医とが十分に話し合って決定する。最近は放射線療法の成績が手術と変わらなくなってきたこともあり、放射線療法を選択する人が増えてきている。

舌ガンに対する放射線療法には、外から放射線をあてる外照射では治療効果が不確実とあって、小線源療法が中心となっている。

小線源療法は放射線を出す金粒子を舌に永久的に埋め込んだり、放射線を出すイリジウム針を数日間舌に刺して行う治療。どの治療を受けようか迷う患者が多いので、その場合は、手術と放射線療法の両方に力を注いでいる病院がベストである。

そして、忘れてはいけないのが、舌ガンなどの頭頚部ガンは、近くの部位のガンを合併する率が30%もあること。喉頭ガン、咽頭ガン、食道ガンなどのチェックもしっかりしておく必要がある。

 

食生活のワンポイント

舌ガンの原因としてあげられているのは、「とがった歯や不適合な入れ歯、詰め物の慢性的な刺激」「口腔内の不衛生」。歯の問題は優秀な歯科にチェックを受け、舌の環境を良くしておくに限る。

また、口腔内の衛生環境は本人のブラッシング等である。食後にしっかり歯を磨くことで、口腔内の衛生は大きく改善する。

加えて、「たばこ」「アルコール」。日本頭頚部癌(とうけいがん)学会(岸本誠司理事長)は、2006年6月15日に「禁煙・節酒宣言」を行った。

たばこは舌ガンに結びつく。とりわけ、かみたばこは口腔ガンの原因と指摘されている。かみたばこの化学的刺激が悪いのである。ただし、カレーやキムチなどのような辛さの刺激には、舌ガンを含めた口腔ガンの問題はない。

アルコールは禁酒ではなく「節酒」。節度ある量であれば問題はない。というと、酒好きは自分に都合のよい適量を考え出してしまう。が、それは正しくはない。

数値にすると、日本酒に換算して1合まで、ビールなら中ビン1本程度と考えるべきである。