原価を振り分けるにはルールがある

そんなものは分けられない……と片づけてしまっては、正しい原価は計算できません。そうなると、トンカツ弁当やおにぎりの値段が決められないことになるし、儲けも計算できないことにもなるでしょう。

そこで、原価を正しくつかむための「原価計算」の方法では、作ったモノごとに特定できない原価は、一定の基準によってそれぞれのモノに振り分けることになっています。

お弁当屋さんのガス代の場合でいえば、ごはんとトンカツそれぞれのガスコンロの使用時間などがひとつの基準になるでしょう。たとえば、ごはんとトンカツのガスコンロの使用時間の割合が3対1だったら、ガス代も3対1で分けるという具合です。

ただし、トンカツ弁当だけならいいですが、ほかにも弁当を作っているようなときは、使用時間でガス代を振り分けることもむずかしくなりますね。こういうときは、一括して「間接費」という形で処理することになっています。

原価を計算するときには、このようにいくつかの決められたルールがあります。たとえば、仕入れた材料費をすべて原価にしない、使った分だけ原価にする、給料は25日に支払っても、原価としては月末までの分を計算するなどです。それらも知っておくと原価についてさらに深く理解できます。

大量生産・大量販売で安く売れるのは、なぜ?

原価にはまた、性質の違う2つの原価が含まれています。これについて簡単に触れておきます。

大量生産だと原価が下がるのは、なぜ?

ひとつは材料費などのように、売ったり作ったりする量が増減すると、それに比例して増えたり減ったりする原価。これを「変動費」といいます。

もうひとつは、売ったり作ったりする量に関係なく一定額が発生する原価です。これを

「固定費」といいます。販売員の給料などは、売れても売れなくても支払うので固定費ですね。そのほか、家賃なども固定費になります。

100円ショップのカラクリは?

100円ショップなどは、この原価のしくみを利用して格安での仕入れを実現しているのです。というのは、100円ショップはメーカーに対してケタはずれの大量発注をします。

すると、大量注文を受けたメーカーでは、一定額が発生するほうの原価が大量の製品に分散されるので、1個当たりの原価が大幅に下がります。つまり、100円ショップの要求に応じて格安で出荷しても、メーカーとしては原価の「元」がとれるということです。

これが昔からいわれてきた大量生産・大量販売のメリット、いわゆる「スケール・メリット」ですね。こうしたカラクリも、原価のしくみがわかっていると理解できます。

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