もしモノの原価がわからなかったら、どうなる?

なぜ「原価」について知る必要があるのでしょう。モノの値段は基本的に、「原価プラス売る人の儲け」で決められます。売る人の儲けは、売る人が儲けたいと思った額で決めることが可能です(実際には、ほかのお店の値段などを無視して決めることはできませんが)。

しかし原価は、売る人が決めることはできません。ということは、原価がわからないといくらで売ったらよいのか、値段が決められないということです。

では逆に、適当な値段を付けて売ってしまったら? 今度は儲けの額がわからなくなってしまいますね。値段から原価の額を引いたものが、儲けになるわけですから。

「原価」はビジネスの基本です

それでも個人の小さな商売の場合は、たまに適当な値段で売ってもそれほど支障はないかもしれません。実際、個人商店などでは「おまけしちゃおう!」などと言って、端数を値引きしてくれることがありますね。

しかし、会社はそうはいきません。

久保豊子監修『これだけは知っておきたい『原価』のしくみと上手な下げ方 改訂版』(フォレスト出版)

商品1個当たりの値引き額はわずかでも、年間の売上にすると大きなマイナスになるかもしれないのです。顧客への利益還元として値引きをするにしても、原価をわかってその額を考慮した上でしないと、たいへんなことになります。

しかも原価がわからないと、期末に決算をしても利益が計算できないし、コスト削減に取り組もうとしても手のつけようがありません。もちろん、来年の予算も計画も立てようがないので、行き当たりばったりの経営になってしまいます。

このように、商品や製品、サービスの原価を知ることは、あらゆるビジネスのスタートになる基本なのです。

その原価が何で構成されていて、どのように計算できるのか、しくみを知らないことには、ビジネスのスタート地点に立ったとはいえないでしょう。