経済政策を誤ったのは、“思想決定説”と“政治決定説”が絡み合ったせい

中野氏は2005年にエディンバラ大学大学院から博士号を取得。専攻は政治思想だった。

「インフレを懸念する主流派経済学を勉強したエリートたちが経済政策を立案するから、デフレになるというのが“思想決定説”。一方で、お金の価値が下がるインフレを嫌う富裕な人たちが政策決定に圧力をかけるから、デフレになるというのが“政治決定説”。30年近く経済政策を誤ったのは、“思想決定説”と“政治決定説”が絡み合ったせいだと私は見ています」

中野剛志『全国民が読んだら歴史が変わる 奇跡の経済教室【戦略編】』(ベストセラーズ)

その中野氏が支持するのがMMTだ。MMTは「通貨発行権のある政府にデフォルトリスクはまったくない」という主張だ。

通貨を発行できる政府は、インフレ悪化さえ注意すれば、いくらでも国債を発行してかまわない。日本のようなデフレ状況なら、景気回復のためにどんどん財政出動してよいことになる。つまり、増税で景気悪化を招いてまで、財政健全化を急ぐ必要はない、というのだ。

「本シリーズは、高校生にもわかるレベルでMMTを解説しました。一般の方々が理解してくれたら、選挙などの政治参加で、誤った経済政策を正してくれると期待したからです。エリートたちに理解させるのはもう諦めましたから」

増税デフレが確認されたとき、MMTの注目度はさらに高まるかもしれない。

中野剛志
評論家
1971年、神奈川県生まれ。元京都大学大学院准教授。東京大学卒業後、通商産業省に入省。エディンバラ大学大学院にて博士号取得。
(撮影=研壁秀俊)
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