ホテルの一室から姿を消した大富豪

狙われているのは官僚たちだけではない。上海閥と親しい富豪もまた、次々に災難に遭っている。

2014年、香港に本社を置く中国の政府系コングロマリット「華潤集団」の宋林董事長が、突然巨額の汚職容疑で失脚した。宋林氏は上海閥人脈に連なっており、習近平氏ににらまれてのことであった。

また2017年1月には、中国の若き大富豪・蕭建華氏が、滞在していた香港のフォーシーズンズホテルの一室から姿を消すという事件が発生した。上海閥人脈のマネーロンダリング(資金洗浄)を担当していたと考えられる同氏を拉致したのは、中国政府の情報部員らであったようだが、今日に至るまでその消息は明らかになっていない。

今回の逃亡犯条例の改正案は、こんな水面下での激しい戦いが続く中で、突如浮上してきたのである。

このようにして見ると、今回の香港における混乱の背後にあるのが、「暴力的な習近平独裁政権」対「非力な民主抵抗勢力」という単純なストーリーだけではないことだけは理解しておいた方がよさそうだ。(続く)

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