事業がうまくいき始めると、読書傾向も変わります。この時期はグローバル企業の経営本や、歴史や宇宙、生物論など、人間のオリジン(起源)に迫る本を中心に読んでいました。グローバル展開するにあたって、会社や人間の本質とは何かという問題意識が芽生えてきたからだと思います。

LINEの社長を退任して、C Channelを立ち上げ

48歳のときにLINEの社長を退任して、C Channelを立ち上げました。日本発で世界ナンバーワンのメディアをつくるためですが、最初の半年は苦労の連続でした。自分でトイレ掃除をしたり、プレスリリースを書いたり。そうした作業も苦になりませんが、設立直後の発表会で「いつでも黒字化できる」と答えてしまい、そのプレッシャーは感じていました。主な対象ユーザーである若い女性の感性がわからないことも悩みでした。

起業した年の暮れにハウツー動画で1億再生を記録してようやく成功モデルをつかむことができましたが、そこまでくじけずに走り続けられたのは、『HARD THINGS』(ベン・ホロウィッツ)を読んでいたからかもしれません。シリコンバレーの投資家が起業家時代を振り返った本ですが、会社が訴えられたとか、資金がショートしてつぶれそうになったとか、全編、暗い話しか書いてない。これに比べれば自分の悩みはマシだなと慰められました(笑)。

ハウツー動画でブレークした後も、ビューティ動画やママ向け動画メディア、動画オーディションアプリなど、さまざまな切り口でサービスを増やしています。もちろんその裏には途中で頓挫したり、方向転換したサービスもあります。大切なのは、やってみること。絶対に成功するサービスは誰にもわからないので、まず動き始めて、ハードシングスを乗り越えるために試行錯誤するしかないと実感しています。

(構成=村上 敬 撮影=大沢尚芳 写真=Getty Images)
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