国民は「いい加減にしてくれ」と怒り心頭
北方領土は戦争で取り戻せと発言して顰蹙を買った丸山穂高という衆院議員(大阪19区)が、今度は竹島を戦争で取り返すしかないという問題発言をした。
「やりたきゃ、お前が竹槍を持って戦争してこいや」
私はそう思うが、怖いのは、そうした「ホンネ」に同調する層がわずかだが存在することである。そのわずかな人間たちが、SNSで「いいね」を安売りし、拡散していくのだ。
メディアやSNSに煽られた結果が、日本経済新聞の世論調査にあらわれている。8月30日~9月1日の世論調査によると、韓国向けの半導体材料の輸出管理を強化したことは「支持」が67%で「支持しない」が19%だった。韓国との関係について「日本が譲歩するぐらいなら改善を急ぐ必要はない」と答えた人も67%に上った。
私は、これは安倍首相に対する国民の批判の声ではないかと考えているのだが。トランプ米大統領の靴でもなめるがごとき土下座外交、ロシアのプーチンには騙され続け、中国の習近平からは三等国扱いされている安倍首相に、国民は「いい加減にしてくれ」と怒り心頭なのだ。
そこに、参議院選目当てに韓国強硬策を安倍が打ち出し、安倍首相御用達のメディアが煽ったものだから、欲求不満のはけ口として今回のような韓国バッシングが起きたのである。
日韓紛争は、トップ同士が話し合わないうちは解決しない
現在、メディアの多くは、権力の暴走をチェックする役割を果たさず、権力側のリークする情報を裏も取らず垂れ流すことだけに熱心だ。
7割近くが韓国への強硬策を支持しているというのは、その“成果”である。
『週刊文春』(9/12号)も、「文在寅の自爆が始まった」、『週刊新潮』(同)も「韓国大統領の『玉ねぎ男』大臣任命強行で検察が法曹を逮捕する日」という特集をやっている。
だが、他国のことにかまけている場合ではない。米中の経済戦争の影響で日本株は乱高下し、円高が進んでいる。
こんな中で10月には消費税が10%に増税されるというのに、安倍首相は国会を開かず、外遊と称して逃げ回っている。
景気後退、年金問題、消費の落ち込みについて、安倍首相は説明責任を果たそうともしない。自民党には、そんなトップに物申す人間もいない。このお粗末な政治状況を放置しておいて、韓国を難じるこの国のメディアは、どういう神経をしているのだろう。
民主化運動を闘ってきた文大統領と、軍事独裁政権時の朴正煕から、1965年の日韓国交樹立を裏で主導したと勲章を授与された岸信介を祖父に持つ安倍首相では、水と油であろう。
だが、嫌な相手だから会わないというのでは国のトップとしては失格である。徴用工問題に端を発した今回の日韓紛争は、トップ同士が話し合わないうちは解決しない。それを後押しするのがメディアの役目であるはずだ。
戦後最悪といわれる日韓関係の中で、両国のメディアの力量も試されている。(文中敬称略)