自分の実力を「過大評価」する男の子

こうした幼児期の体験が影響するほかに、男女の違いがあるとすれば、女の子は一度苦手意識を持ってしまうと、いつまでもその気持ちを引きずってしまい、そこから抜け出しにくいという点です。一方、男の子は、自分の実力を過大評価する傾向があり、一度、算数で大ミスをしても「今回はたまたま調子が悪かっただけ~!」とあくまで前向きです。

しかし、この前向きという特性が時によくない方向へといってしまう場合があります。算数は図や式をきちんと書くプロセスが非常に大切です。そして、子供にそのように指導をすると、その手間を惜しまずにきちんとやるのが女の子です。一方、男の子は図や式を書くことを面倒くさがります。「ボク、算数得意かも!」と思っているような子はなおさらです。

しかし、4、5年生の間はだましだまし得点できても、6年生になると問題の難度が上がり、図や式を面倒くさがって書かない子はぽろぽろと点を落としていきます。

なぜ「字をていねいに書く」必要があるか

だからこそ、男の子には「式を書くこと」「字をていねいに書くこと」を言い続けなければいけません。親が口を酸っぱくして言っても、なかなかやりたがらないのが男の子。残念ながら最後まで身につかずに中学受験を終えてしまう子もいます。

しかし、そんな子も中学生になり成熟度が高まるとできるようになることも。ポイントは本人が散々痛い思いをした上で、「やっぱり字はていねいに書かないと読み間違えるもんなぁ~」「式を書いた方が思考の整理がしやすいんだな」と納得すること。そうすれば、自発的に取り組めるようになります。実際、私の教え子たちを見ていても、採点するのが困るようなぐちゃぐちゃな字だったりした男の子たちが、別人かと思うくらい、ていねいな字で式をびっしり書くようになっています。

何度言っても雑な解き方が直らない場合は、本人の成長を待つしかありません。入試では採点官が読める字で書かなければならないし、算数は立式が重要なのは事実ですが、あまりこだわりすぎると、算数嫌いになってしまうので要注意です。