離婚裁判で約束を破った妻もリストに
失信被執行人リストにはどのような人が登録されるのでしょうか。「最高人民法院公告2017年7号」によると、次のように定められています。
2:証拠の偽造、暴力、威嚇などの方法で執行を妨害、拒否したもの
3:虚偽の訴訟、虚偽の仲裁、あるいは財産の隠匿、移転などによって法の執行を回避したもの
4:財産報告制度に違反したもの
5:消費制限令に違反したもの
6:正統な理由なく協議の履行、執行に違反したもの
4、5は共産党幹部や国有企業関係者の党紀違反を罰するものなので、一般の国民が対象となるのは残りの項目です。ほとんどのケースは裁判で確定した賠償などの義務を履行しなかった場合にリストに登録されます。取引先に代金を支払わなかった企業の代表者から、離婚裁判で子どもを毎月、前夫に会わせると約束したのに従わなかったケースまでさまざまです。
忠実に履行しないと高速鉄道にも乗れない
2019年5月、「格闘狂人・徐暁冬が失信被執行人リスト掲載」というニュースが中国メディアをにぎわせました。徐暁冬は総合格闘技の選手で、伝統的な中国武術の達人たちはニセモノばかりだと批判。実際に試合を行ってはたたきのめすという派手なパフォーマンスで一躍有名人となりました。
しかし、徐は自らのネット番組で、太極拳の達人・陳小旺を「嘘つき」「犬ころ」呼ばわりしたことで、名誉毀損で訴えられて敗訴。裁判所は賠償金と公開謝罪を命じましたが、徐は賠償金は支払ったものの、公開謝罪をしませんでした。そこで陳が判決不履行を申し立てて、失信被執行人リストに掲載されたのです。「高速鉄道に乗れなくなったから、鈍行で移動するしかない」と徐は嘆いていますが、それでも公開謝罪はしたくないそうです。
また中国を代表するIT企業百度の創業者である李彦宏も、2019年4月末にリスト登録の申請がなされました。作家・陳平の著書の一部が許可を得ずして百度のサービスに使われたとして裁判があり、裁判所は謝罪と賠償金の支払いを命じました。その判決を履行しなかったとして、陳はリスト登録を申請したとのことです。陳の申し立てに対し、百度側は根拠がないと反論していますが、本稿の執筆時点でまだ結果は判明していません。