「認知の壁」を突破できるかが最初の関門

この「認知の壁」に阻まれるのは、溢れる情報にまみれるような状況だけとはかぎりません。目の前にいる人が話をしているのに、その内容がまったく理解できないという経験をしたことがある人も、少なくないのではないでしょうか。

たとえば、聴き手に前提となる知識がないのに、学者や専門家に難しい言葉で説明されると、話の内容が右から左へと流れてしまうような状況が起こります。

あるいは芸術家によるアート作品の解説、さらには哲学者が語る異次元の話だったりする場合もあるでしょう。とくに、話し手と聴き手の知識や理解度のギャップが大きいときに起こりやすいケースですね。

「認知の壁」に阻まれたネタは、聴き手の関心ゾーンに入り込めず、「つまらない」と認定されてしまいます。聴き手に「おもしろい!」と思ってもらうための最初にして最大の関門が、この「認知の壁」を突破することなのです。

ここで考えるべきことは、いかに聴き手に興味・関心をもってもらうかということにほかなりません。話すネタを聴き手の「関心ゾーン」に持っていけるようになることが、「認知の壁」を破るための課題なのです。聴き手に「おっ!」「ほう」などと思わせることができたら成功です

「自分に関係ないこと」は、すぐ忘れられる

続いて、話がつまらなくなるパターン②です。

このパターンは、ネタに多少の関心はあるけど、「まあ、でも、自分には関係ないかな」と聴き手に思われてしまうケースです。ここには「私事(わたくしごと)の壁」が立ちはだかっています。

極端な話、人がもっとも興味があるのは、「自分に直接関わること」です。つまり、関心はあるけど「自分には関係ないこと」だと判断されたら、ネタはすぐに忘れ去られてしまうのです。

たとえば、独立願望のある企業勤めのビジネスパーソンが、講演会などで転職のノウハウを聴いても、「会社を辞めはするけど、独立したいから、転職ネタはオレには関係ないな」と思ってしまうケースです。多少の関心は惹けても、結果的に「つまらない」と認識され、彼の頭には残らないのです。

「私事の壁」を突破するためには、聴き手に「自分とどう関係しているのか」ということをイメージさせられるかどうか、がカギとなります。

先述した例では、「会社を辞めるという前提での選択肢のなかで、転職がもっとも自身のキャリアシフトを成功させる確率が高いのです」などと、聴き手に大いに関係している話だとアピールすることが、「私事の壁」を破るための課題です。その説明により、聴き手に「自分にも関係あるかも!」と思わせることができたら成功です。