会見を覆う「無言の圧力」の正体
記者として私がやるべき仕事はシンプルだ。取材し、聞くべきことを菅官房長官に淡々と聞く。記者の仕事は、権力者の意図をニュースに仕立てて伝えることではなく、権力側が隠したい、隠そうとしている事実を明るみに出すことだ。過去も現在も未来も何も変わらない。
なぜ活発にならないのか。会見を覆う静かな圧力の正体は何か。ひとつは会見後、菅官房長官を囲んだ取材(オフレコの懇談=オフ懇)を行うため、会見の場で侃々諤々やってしまうと差し障ってしまうことだろう。どうしても同調圧力が生じてしまう。
それはわかるが、静かな会見を見ていると、やはり日本独特の記者クラブ、番記者という制度について向き合わざるを得ない。記者クラブについては後で改めて考察したい。
会見の異分子となってしまった私であっても、無言の圧力が顕在化しているという事実に向き合わざるを得ない出来事が起きた。
「クラブ側の知る権利が阻害される」
神奈川新聞が2019年2月21日、「忖度による自壊の構図」「質問制限 削られた記事『8行』」というニュースを報じた。書いたのは、田崎基記者だ。
田崎記者は、共同通信の官邸の文書に対する大型記事のなかで、削られた部分があったと切り込み、分析していた。
共同通信という会社は、日本最大のニュースの配信会社で、24時間体制で世界中からニュースを送り出している。地方のメディアだけではなく、NHKをはじめ、都内の新聞社も加盟しているところが多い。東京新聞も共同通信に加盟している。共同通信からの配信は、編集局に放送で流れてくる。すでに配信したニュースの一部を削除したり修正することはままある。
しかし、このときは通常の修正ではない、看過できないと、田崎記者は記事にしてくれた。
以下、田崎記者の記事を要約する。
2月18日に共同通信が各加盟社に対し、いったん配信した記事の一部を削除すると通知してきた。その記事は、官邸側が私の質問に対して制限をかけようとしてきたことに対し、さまざまな反対の声が上がっていることを紹介する内容だった。年末に、官邸から記者クラブへ申し入れ書が出された経緯や、その後に報道関連団体から出された抗議声明、識者の見解などを紹介する記事の終盤に差し掛かる以下の段落の記述が削除されたという。
さらに共同通信は削除理由について、こう記していたという。