では、サラリーマン個人の運用面ではどうか。「円高のチャンスで外貨を買おう」という姿勢はいいが、現在の水準は、まだチャンスとは言い難い。世間には、国内の問題点だけを取り上げて「日本は財政破綻して、円の価値がなくなるかもしれない」という主張もあるが、政府が信用ならないのは日本も海外も同じで、まだマシだから円が買われているわけだ。慌てて外貨を買うことはない。
とはいえ、5年、10年といった長期レンジでとらえれば、今が円高の場面である可能性はある。資産を日本国内のものだけで持つのではなく、運用先を海外にも広げるのはリスク分散として意味がある。
ただし、単一通貨で為替差益を狙う方法はやめたほうがいい。為替相場は一方が上がれば一方が下がるというゼロサムゲームにすぎず、長期的な資産形成を目指すなら為替リスクはなるべく避けるのが基本だ。このためには、ドルだけに投資するのではなく、投資先をユーロや新興国など複数に分けてリスクを分散させるのがいい。さらに、単に通貨に投資するのではなく、世界経済の成長が利益をもたらす方法が望ましい。
こうした点からお勧めしたいのは、海外の株価指数に連動するインデックスファンド(市場連動型の投資信託)を組み合わせる方法だ。購入手数料のかからないノーロードタイプを選ぶと有利だ。資金配分としては、先進国と新興国で2対1くらいのバランスが適切だろう。
なお、ドルベースで価格上昇が続いている“金”に注目する人もいるが、利息も配当もつかない金は「全く働かない美人の奥さん」のようなもの。キレイだが盗まれるのが心配――ということで、この高値水準で買うのはお勧めしない。
(構成=有山典子)