この夏、「生保の二重課税」というニュースに目を奪われた人も多いだろう。最高裁は今年7月、「年金方式で生命保険金を受け取るとき、相続税を課したうえに所得税を課税するのは違法である」との判決を下した。これを受け、国税当局は年内にも徴収しすぎた所得税を還付する方針だという。

「二重課税」というのは、インパクトのある言葉だ。保険金を年金で受け取るのはごく一般的な方法だけに、「自分の保険も関係あるのか?」と思った人も少なくないだろう。そこでまず、どんな場合が二重課税に該当するのかを整理してみよう。

今回、二重課税にあたるとされたのは、夫が亡くなったときに「年金払い方式の保険」で保険金を受け取ったケースだ。

「年金払い方式の保険」とは、保険金を何年かにわたって分割して受け取る仕組みの保険のことをいう。すぐに思い浮かぶのは「個人年金保険」だが、これは自分で年金を受け取る場合、相続税がかからないので二重課税問題は起こらない。問題になるのは、亡くなった人の保険金を受け取った場合なのだ。今回、争われたのも、死亡保険金を年金で受け取る「収入保障保険」というタイプの保険だ。

こうした保険の場合、死亡保険金に相続税がかかるだけでなく、年金として受け取るときに所得税もかかってしまう。これが今回、二重課税にあたると判断されたわけだ。

だが、「年金払い方式の保険」でなくても、死亡保険金を年金で受け取る方法は従来から一般的に行われている。多いのは、死亡保険金を一時金として受け取った後に年金として支払いを受ける方法だ。この場合は、死亡保険金が相続税の対象となり、いったん課税は終了。その後に受け取る年金のうち運用益だけが雑所得として所得税の対象となる。死亡保険金は運用の元本とみなされて税金がかからないので、二重課税は起こらない。たとえば、「定期付終身保険」の死亡保険金を年金で受け取った、というケースがこれにあたる。