設備投資の直後に旅行客が減った

しかし、こうした設備投資を実施した直後から、集客減に見舞われる。主に団体旅行客の減少から、長崎県における延べ滞在客数は、1996年の約1418万人をピークに、2009年には約970万人と、10年余りで3割以上も減少した。

平戸市では、同県のピークを迎える5年前の1991年(約156万人)に転換期が訪れていた。その後、延べ滞在客数の減少に歯止めがかからず、2011年までの20年間で約3分の1(約57万人)に落ち込んでいる。

根本的な解決を後回しにしていた

旗松亭の年収入高は、平戸市の延べ滞在客数をなぞるように推移していく。2010年1月期は約7億2200万円まで落ち込み、営業損益段階からの赤字を余儀なくされていた。

この間、子会社吉花亭も同様に経営が悪化。同期末時点で債務超過額は約4億5900万円にのぼり、資金繰りも悪化する。収入が落ち込む中、継続的に実施してきた改装費用などで10億円を超える有利子負債を抱えていたが、2010年3月には金融機関からの借入れ金が債権回収会社に売却される事態となった。

続いて2012年1月期の年収入高は約6億4200万円にまで落ち込んだが、同期を底として、2013年1月期、2014年1月期と6億5000万円前後に踏みとどまる。

経営陣は、これを底打ちの兆候ととらえ、「人件費等の固定費を抜本的に削減する経営方針を採用すべきであったのに従来の経営方針を継続した」(申し立て書より抜粋)。金融債権者や仕入れ先等に支払い猶予を要請し、営業活動により生まれたわずかなキャッシュで何とか資金をつないでいたが、根本的な課題解決を後回しにしたのだ。