担保やお墨付きなしにお金は出ない世間とは裏腹に、摩耶は出資に躊躇しない。怪我をしたマラソンのホープ、世界巡りを夢見る市電の運転手、箱庭作りが趣味の消費者金融マンの妻……戸惑いつつも大金を手にした級友たちの生活は様々に揺れる。ハッピーエンドもあれば、思わぬ悲劇も訪れる。
「僕の同窓会がヒントになったところもある。小・中学校とも東京ですけど、いろんな人がいます。渋谷にたくさん土地を持っていて、それを貸すだけで何も働いてない人がいる(笑)一方で、無農薬の自然食品を自分たちで作っている人や、病気になった人もいる。そんな皆の話を聞いているうちに、もし自分にお金があって手助けができたらどんなにいいだろうと思ったんです。まあ、その土地持ちがやるのが一番いいんだけど(笑)、この作品は金持ちほど観てほしいですね。本当に還元すべきところを見失ってほしくない」
ただ、結果がどう出ようと、摩耶はどこか超然としている。見返りの要求はもちろん、“施す”という傲岸さなど毛ほども見せない。
「ちょっとした精神の豊かさがあれば、例えば500円の文庫本を渡すだけでも違いますからね。誰にでもできることなんですよ。大金じゃなくていい」
贈り物は高ければいいというものではない、とわかってはいても、あれこれ考えるのは正直、面倒だと感じることもある。余裕があるときほど、ついつい価格頼みになりがちだ。
「例えば、バレンタインチョコといえばゴディバになるけど、相手は普通に売ってるストロベリーチョコのほうが好きだったりする。要は、その人のことがわかっているかいないか。その人のためにわざわざ買いにいくという行為が大事だし、その行為をわかってくれる人が一番嬉しいですよね」