発売2カ月で4000万円の印税

そのときの編集局長は、中井勝さんだった。近藤誠さんの原稿を一読して、「この人は闘っている」と看破し、長期連載を即断即決した編集長だ。

松井 清人『異端者たちが時代をつくる』プレジデント社

「売らないという書店があるなら、それは仕方がない。しかしこれは、森下という若い記者が何度も何度も両親に接触して、二人から細かく話を聞いて、鑑定書などできちんと裏付けをとったうえで作った本だ。ただの弁解じゃない。母親と父親が、どこで育て方を間違えたのかを正直に明かしているんだ。

一体どうして、こんな事件が起こったのか。中学生のいる親たちはもちろん、全国民が知りたがっている。その思いに応える本なんだ。だから出版する」

中井局長は、激しい口調で一蹴した。

発売すると、反響はすさまじかった。少年Aの家庭と生い立ちへの関心が、多くの読者にこの本を手に取らせた。売らないと言っていた書店も、結局は売り始めた。増刷を重ね、最初の2カ月だけでおよそ4000万円の印税が口座に振り込まれる(現在、文庫も併せて実売88万部)。しかし両親は約束通り、その一部を生活費に充てることさえしなかった。

少年Aが繰り返し観た映画・書籍の実名リスト
『悪い種子』(DVD)

(1)『悪い種子』ウィリアム・マーチ著

ある日、ローダの通う学校で行われたピクニックの最中に、少年が古桟橋から転倒し溺死してしまう。誰もが事故だと思っていたが、少年の遺体には不審な箇所が見つかり始め……。

※本が絶版のため、映画作品をご紹介します。

(2)『FBI心理分析官 異常殺人者たちの素顔に迫る衝撃の手記』ロバート・K・レスラー著

ロバート・K・レスラー、トム・シャットマン著『FBI心理分析官 異常殺人者たちの素顔に迫る衝撃の手記』(ハヤカワ文庫NF)

被害者の血を飲む殺人鬼、バラバラにした死体で性行為にふける倒錯者、30人以上を殺害したシリアル・キラー……異常殺人者たちを凄惨な犯罪に駆り立てたものはなにか?

FBI行動科学課の特別捜査官として数々の奇怪な事件を解決に導き、「プロファイリング」という捜査技術を世界中に知らしめて『羊たちの沈黙』や「X‐ファイル」のモデルにもなった著者が、凶悪犯たちの驚くべき心理に迫る戦慄のノンフィクション。