ただし最近では、女性の労働参加の進展がジェンダー・ギャップを縮小させている。結婚や出産に際して女性が労働市場から退出することにより20~30歳代付近の女性の労働参加率が低下し、育児が落ち着いた時期に再び上昇するという、労働力率の「M字カーブ」が比較的最近まで日本では鮮明だった。だが近年では、育児をしながら仕事を続ける女性が増えてきたため、M字の谷の部分がかなり浅くなってきている。

女性の賃金は入社時点ですでに男性の86%程度

徐々に、女性の労働参加が進んでいるが、それでもなお男女間で大きな賃金格差が残っているのはなぜなのか。

女性活躍の進捗を測るためのKPI(Key Performance Indicator、成果指標)として、政府は課長職に占める女性の割合を掲げているが、管理職に登用されるのは一般的に正規雇用者だろう。そこで、厚生労働省「賃金構造基本統計調査」における正規雇用の女性の所定内給与額を、男性の賃金水準を100として指数化し、勤続年数別に示した(図表2)。所定内給与には基本給のほか、職務手当や精皆勤手当、家族手当などが含まれる。

2018年における女性の賃金は、すでに入社時点で男性の86%程度の水準にとどまり、勤続年数が長くなるにつれて格差が拡大している。その理由はいくつか考えられるが、ここでは3点指摘したい。

第1には、21世紀職業財団が2015年に調査した「若手女性社員の育成とマネジメントに関する調査研究 均等法第三世代の男女社員と管理職のインタビュー・アンケート調査より」によれば、男性管理職の部下育成の熱心さと困難な仕事の与え方は、男女で差があるという。

男性管理職は男性部下により困難な仕事を与えている一方で、男性管理職が女性に対して過度な配慮をしてしまうことなどから、企業内での育成に男女差が生じていることも考えられる。無意識な偏見や思い込みは、アンコンシャス・バイアスと言われ、成長機会の男女差となって賃金格差につながっている可能性は小さくないと思われる。

一般職採用企業の方が男女格差が大きい傾向

第2に、コース別雇用管理制度の影響が考えられる。日本企業は総合職と一般職という区分で雇用管理することが珍しくない。すなわち、女性が従事することが多い一般職は総合職よりも賃金水準が低く、昇進や昇格の機会が少ないことも賃金格差に表れているだろう。一般職を採用している企業における女性の正規雇用者の平均賃金は男性よりも低くなりやすく、勤務年数が長くなるほど賃金格差が拡大しやすい。