ファンでありながらも僕は、見て見ぬふりをしていた
ジャニーズは努力によって特別になっていった人たちである――。
それは岡本さんの背中から教わった、偉大な真実でした。そして、この真実を直視することは、僕の人生観を一変させました。それは、絶望でもあり、希望でもありました。
それまでは、ジャニーズを恵まれたルックスをもって生まれた人たちの集団だと思っていました。おそらく、多くの人が同じような眼差しでジャニーズを見つめていることと思います。彼らは運良くイケているルックスで生まれ、運良くジャニーズに選ばれ、運良く人気を得ている「特別な星のもとに生まれた、選ばれし人たちなのだ」と。
彼らの活躍の裏には不断の努力や思考の重なりがあります。しかし、ファンでありながらも僕は、それを直視せず、見て見ぬふりをしてきたのでした。
なぜならば、「彼らと自分は生まれた星が違うのだ」と思いこむ方が、楽だったから。しかし、現実は違いました。彼らもまた「普通の星のもとに生まれた、普通の人たち」だったのです。ですが、彼らはそこから努力を重ね、一方で自分は努力を怠っていた。その差が、そのまま人生の差になっている。それを見つめることは苦しくもありました。
この世界は、努力すればなんとかなる希望の世界
舞台演出家・蜷川幸雄に密着したNHKのドキュメンタリーで、こんなシーンがありました。蜷川幸雄は、自分の劇団に所属する、まだ売れていない若手の舞台俳優たちにこう檄を飛ばします。
「なんでジャニーズの方が努力してんだよ! お前らより売れてる奴らがよ! 全然説得力ねえよ!」
ジャニーズたちの人生に目を向けると、自分の人生こそ説得力がないものだ、ということを自覚しなくてはいけない――それが絶望の理由です。
しかし一方で、岡本さんの言葉は、希望でもありました。「この世界は、努力すればなんとかなる希望の世界である」と教えてもらったような気がするからです。それは、一見すると、芸能界のような才能のみで決まるように見える世界ですら同じなのだ、と。
“普通の星”に生まれた人たちが、特別なことを成し遂げるまでの進化の過程をつぶさに見ていけば、同じく“普通の星”に生まれた何者でもない自分にも、何か特別なことを成し遂げられる道筋を示してくれる気がしました。それは絶望の後に差し込んだ、一筋の希望の光でもありました。そこにこそ、人生を変えるヒントが詰まっているはずだ、と。