ジャニーズ本人に思いを告白した日

元男闘呼組の岡本健一さんの舞台出演時に通った、西新宿の稽古場付近の公園。当時の感情を思い出すために定期的に足を運ぶ

冗談はさておき、「ジャニーズに自分の人生を変えてくれるような哲学がある」「ジャニーズは努力でできている」と聞いて、こう感じると思います。

「いやいや、彼らは“もともと”すごかったんでしょう?」と。

たしかに、僕もそう思っていました。

特別な星のもとに生まれてくる人と、それ以外の星に生まれてくる人――。

世の中にはその2種類しかいないと思っていたのです。

「ジャニーズは特別な星のもとに生まれた人たちなんだ」と、彼らと自分の間に線を引いていました。

しかし、そうではないと、ジャニーズ本人から突きつけられたことがあります。

オーディションに落ちた翌年。20歳の頃、端役ながら、元男闘呼組の岡本健一さんの舞台に出演する機会を得ました。稽古期間も3週間を過ぎ、だいぶ打ち解けてきた頃、休憩場で2人きりになった瞬間を見計らって、ずっと言おうと思っていたことを、岡本さんに伝えました。

「僕、ジャニーズJr.になりたいんです」

笑われるかと思っていました。「その顔で?」「その身長で?」「その歳で?」……何を言われるんだろうと怖くもありました。そもそもオーディションで一度落ちている身。自分が何者でもないということをあらためて突きつけられる可能性のほうが高かったと思います。

しかし、岡本さんは僕の目をまっすぐに見て、こう言いました。

「努力できる?」

岡本さんは、ルックスや運動神経のような生まれもった才能ではなく、「努力できるかどうか」の一点のみで、ジャニーズ入りの資格を問うてきたのです。岡本さんの目は真剣で、僕の直訴を一笑に付したりはしませんでした。

初めて出会った「無謀な夢を否定しない大人」

現在持ち合わせている能力で判断するのではなく、未来を見て「やるのか、やらないのか」を問う。それは、ジャニー喜多川が人を選ぶときの「やる気があれば誰でもいい」という選抜基準と、驚くほど一致しています。その詳細は第2部で紹介しますが、もちろん当時の僕はそんなことを知るよしもありませんでした。

ジャニー喜多川がそうであるように、岡本さんは夢を笑わない大人でした。僕が初めて出会った、どんなに無謀な夢を語ったとしても、人の夢を否定しない大人。

岡本さんは、教えてくれました。ジャニーズの人たちが、小さい頃からどれだけ努力を重ねてきた人たちであるかを。

そう語る岡本さん自身、休みの日も稽古場に来て、空いているスペースでひとり稽古をしたり、他の出演者の様子をじっと眺めたりしていました。年下のキャストにアドバイスをするためだけに来てくれることもあり、その後、舞台演出家として活躍されるキャリアを思うと、演出家としての努力をしていたのかもしれません。

岡本さんをはじめとするジャニーズは、天性の才能を持って生まれてきたから、今の活躍があるわけではない。努力を重ねてきたからこそ、活躍できている――。