校則を撤廃しようとはならない
【上田】たとえば荒れてる高校に喧嘩禁止の校則ができたとします。誰かが身を守ってくれないとしても、その校則を撤廃しようとはならない。国も同じで、せっかく戦争ダメよという決まりをつくったのに、それを放棄するのは人類史的な後退です。
【田原】でも現実に米国が守ってくれなくなったら、どうやって自分たちを守るの? そこから逃げたらインチキだよ。政治家はインチキでいいけど、作家はそこを追求しなくちゃ。
【上田】いや、逆じゃないですか。方法を考えるのは政治家の仕事。作家の仕事は、戦争禁止を撤廃するのは人類史的な後退だと表現していくことだと僕は思っています。
【田原】上田さんがそれを表現したのが新作の『キュー』ですか。この作品は最初、インターネットで無料配信していたそうですね。そこも現代らしい。
【上田】2年前からヤフーと『新潮』で同時連載していました。『新潮』は1万部刷っていますが、ヤフーは毎月700億ビューで、『新潮』では届かなかった層にも届きます。実際、読者イベントをやると、ヤフーで読みましたという人も多いんですよ。単行本は参院選の前に合わせて出しましたが、ウェブをきっかけに完成版を読みたい人も多いと聞き、期待しています。
【田原】『キュー』が1つの集大成だとすると、もう書きたいことがなくなっちゃうんじゃないですか。
【上田】いや、いまも毎日快調に書いてます。いずれまた発表できれば。
【田原】まだIT企業の役員も続けていらっしゃる。上田さんは将来、どうなっていくんだろう。
【上田】少なくともあと4年は作家として必死にやります。宮崎駿監督もおっしゃっていたけど、才能10年説ってあるじゃないですか。僕はデビューしてから6年なので、あと4年。そこまでは先のことを考えずにやって、そのとき見えた風景で次を考えようかなと。
上田さんへのメッセージ:リアリティの先にあるものを、表現し続けろ!