※本稿は、森信茂樹『デジタル経済と税』(日本経済新聞出版社)の一部を再編集したものです。
租税回避が引き起こす4つの大問題
インターネットの発達により、これまでにないビジネスモデルを持つ企業が現れ、デジタル経済が誕生しました。その代表的な企業がプラットフォーム企業で、GAFAと呼ばれるGoogle(グーグル)、Amazon(アマゾン)、Facebook(フェイスブック)、Apple(アップル)の4社です。
実は彼らには、世界経済の原動力となっているという顔に加えて、もう一つ別の顔を持っています。それは巧妙なタックスプランニングを考案して、自らの税負担を回避しているという顔です。
租税回避という言葉の意味は、ここでは「違法な脱税でもない合法な節税でもない、いわばグレーの分野の行為で、アグレッシブな場合(濫用的租税回避)には、私法上の取引そのものは有効であるものの、その結果もたらされる効果は認められない(税法上否認される)」という意味で使っています。
租税回避がなぜ問題かといえば、大きく四つの理由があります。
第1に、税負担の公平性が害され、正直者が馬鹿を見ることから、納税道義に大きな影響を与えるということです。
第2に、財政赤字に悩む国家財政に影響を及ぼすことです。国民の福祉をあずかる現代福祉国家としては、国境を越えた租税回避に対してて課税権を及ぼし税源を確保することが責務となり、企業と国家との間での大きな争点になります。
第3に、グローバル経済の下で企業の競争条件の公平性(レベル・プレイング・フィールド)が失われることになることです。米国の多国籍企業に見られるアグレッシブなタックスプランニングを放置することは、日本の多国籍企業との競争条件を不平等・不公平なものにしてしまうということでもあります。
第4に、優秀な人材が、社会的厚生という観点では意味のない租税回避という分野に投入されることは、人的資源上の無駄を生じさせているといえるでしょう。
ここではGAFAのうち2社を取り上げて、租税回避スキームを見てみましょう。