なぜ青葉容疑者は包丁やハンマーを持っていたのか
毎日の「クローズアップ」は防火設備にも言及し、「はしごなどの避難器具が必要なのは、3階建て以上で窓が少ない建物など」で、「スプリンクラーは、11階建て以上や窓がない建物などが対象」と書く。全焼した京アニの第1スタジオの建物には、避難器具やスプリンクラーの設置義務はないことがわかる。
今後、焦点となるのは青葉容疑者の放火の動機だ。放火時に「死ね」と叫んだことや、警察官に「小説を盗まれたから放火した」と供述したことは、何を意味するのだろうか。ガソリンだけでなく、包丁やハンマーを持っていた理由も気になる。
毎日以外の新聞はどんな社説を書いているのか。
読売新聞は7月20日付の社説で「理不尽な凶行に憤りを覚える」とのストレートな見出しを立ててこう主張する。
「男は、この会社に勤務したことがない。さいたま市に住んでいたとみられ、近隣と騒音トラブルになったこともあるという。凶行の動機は何だったのか。京都府警は解明に努めてもらいたい」
動機を探り出すことは、類似の事件の再発防止につながる。必要不可欠な捜査である。
「この建物は消防法令上、『事業場』に該当し、スプリンクラーや屋内消火栓の設置義務はない。京都市消防局の立ち入り検査でも法令違反はなかった」
「建物の構造などが被害の拡大に影響を及ぼさなかったか、検証が求められる。同じような建物について、避難経路を再確認し、不測の事態に備える必要もあろう」
ガソリン購入者の身元と使途の確認を義務付けるべき
京アニにはスプリンクラーや屋内消火栓の設置義務はなかった。ただし読売社説が指摘するように、吹き抜けのらせん階段などの建物の構造と火の燃え広がり方の関係は消防当局が検証する必要はある。それは類似の事件・事故を未然に防止するために必要な知見だろう。
読売社説は悪用されると危険なガソリンに対し、警鐘を鳴らす。
「警察庁は販売業者に、不審人物が購入しようとした際の通報を求めているが、注意喚起にとどまる。購入者の身元を確認する法的な義務もない。ガソリンが凶器になりうることを踏まえれば、身元や使途を確かめるべきではないか」
読売の主張に賛成だ。ガソリンは凶器になり得る。それゆえ購入者の身元と使途の確認を行うよう、販売業者に義務付けるべきである。