歌舞伎町の火災と京アニの火災を比較する見当違い

案の定、7月19日付の毎日社説は、最後にこう書いていた。

「一方で、たとえガソリンによる放火でも、あっという間にビル全体が炎と猛煙に包まれてしまったのは不可解だ。2001年に発生した東京・歌舞伎町の雑居ビル火災では44人が亡くなったが、防火扉が固定されていた不備が明らかになった」
「今回の火災で、防火扉の設置や作動状況はどうだったのか。消火設備は備わっていたかなど、詳しい検証が待たれる。多くの人が出入りする場所では、不測の事態にも備えるべく防火策の再点検を進めたい」

防火扉の固定が問題にされた歌舞伎町の火災と京アニの火災を比較して、消火設備の不備の可能性を指摘するのは見当違いだ。京アニの第1スタジオのような鉄骨3階建ての建物には、防火扉の設置義務はない。法令で定められた消火器と非常警報設備は備えられており、京アニに法令違反はなかった。このことは同じ毎日新聞の20日付朝刊の解説記事「クローズアップ」でも指摘していることだ。

毎日の論説委員は、見立てに自信がないのなら、自社の記者の解説記事を待つべきだった。それをせずに、あやふやな知識で社説を書くから、こういうことになるのだ。

「爆燃現象」や「フラッシュオーバー現象」の可能性

毎日新聞の「クローズアップ」では、火が一気に燃え広がり、多くの死傷者が出たメカニズムを探っている。まず出火当時の様子について「一瞬で真っ黒になり、何が起きたか分からなかった」と1階にいた社員の声を紹介した後、防災専門家の話を載せている。

それによると、揮発性の高いガソリンが燃えた場合、爆発的に燃え広がる「爆燃(ばくねん)現象」が起きる恐れがある。熱と爆風で窓ガラスが割れ、新鮮な外気が入ると、火の勢いはさらに強まる。さらに1階から3階まで吹き抜けのらせん階段を通って火が一気に駆け上ることも考えられる。

別の専門家は局所的な火災が急激に拡大する「フラッシュオーバー現象」を示唆しているという。爆燃現象やフラッシュオーバー現象は、今回の火災を読み解くうえで重要な概念になる可能性がある。社説はそうした事実を踏まえたうえで、書かれなければいけない。