もう一つの数字を見てみよう。世界のマーケットを調査するグローバル・データの発表によると、2014年から17年の間に、アメリカでヴィーガンと自己申告した人は1%から6%に増加。全体からみれば少ないものの、6倍というのは見逃せない変化だ。
一体何が起こっているのだろう?
「肉を使わずに何が食べられるか試しているんだ」
おそらく日本人から見ると、ヴィーガンといえば仏教の僧侶が食べる質素な精進料理や、不健康に激やせした芸能人や、アメリカの過激な動物愛護の活動家を想像してしまうかもしれない。
しかし今ブームになっているヴィーガンは、日本人のイメージにあるヴィーガンとも、これまでアメリカ人が持っていたコンセプトのヴィーガンとも違う。
まず、筆者が「シーズンド・ヴィーガン」に来ていたお客さんから聞いた話を紹介しよう。
いずれも大豆などで作られたフライドチキンやザリガニのバジル・ガーリックソースをほおばっていた男性2人、女性1人の3人組。「なぜこの店を選んだのですか?」と尋ねると、20代の男性が「ネットで調べて見つけたんだよ」と答えた。この男性はタンクトップ姿。いかにもジムで鍛えていそうな、筋肉質な体つきだ。
「あなたたちは全員ヴィーガンですか?」と聞くと、返って来た答えは全員「ノー」。ヴィーガン・レストランにわざわざ来ているのに、3人ともヴィーガンではないという。「なぜヴィーガン料理を食べに来たの?」と改めて問いかけると、タンクトップの男性はこう答えた。
「実は1年くらい前から肉や乳製品を減らしたいと思い始めたんだ。できたらヴィーガンになりたい。だから今、ヴィーガンでどんな物が食べられるのか、いろいろ試しているところなんだよ」
一緒に居る男性や女性も「ここはすごくおいしいから、また来たいと思っている」と話してくれた。
“変わり種”だったのが“クール”に変化
場所は変わって、毎年5月に行われるベジタリアン・フード・フェスティバル。ここではヴィーガンとベジタリアン食品のスタートアップ企業が集まり、さまざまな新しいヴィーガンの食アイテムにトライできる見本市だ。
オープン前からミレニアル世代の若者グループやファミリーが行列を作り、関心の高さを物語っている。話しかけてみると、3人グループの1人がヴィーガン、4人家族のお母さんだけがヴィーガンなど、こちらも正真正銘のヴィーガン、またはベジタリアンという人の方がむしろ少ない印象だった。
筆者が話を聞いたのは、ベジタリアン・フード・フェスティバルのオーガナイザーで、自らも14歳からヴィーガンというヴィーガン歴20年のサラ・フィオリさんだ。
「このフェスティバルは今年で9回目。規模も年々少しずつ大きくなりましたが、訪れる人も変わってきています。現在、私たちのフェスティバルに来ている人たちの半分以上は、ヴィーガンでもベジタリアンでもありません」