20軒ほどのミャンマー料理店が集中している

いまでは20軒ほどのミャンマー料理レストランがある。多民族国家らしく、同じミャンマーでも、モン族料理レストラン、シャン族料理レストランなど、民族ごとに分かれているのもおもしろい。ミャンマー少数民族の文化と出会える街なのだ。

「ノング・インレー」はシャン族料理だ。和食とけっこう共通点がある。納豆や豆腐をふんだんに使うのだ。漬物などの発酵食品も多い。揚げた豆腐もあれば、ペースト状にして麺を入れたりもする。納豆を混ぜ込んだチャーハンもいける。ちょっとピリ辛のシャン風高菜は和えたり炒めたりさまざまに使われる。肉味噌を溶いた鶏がらベースのスープに米麺を入れたシャン・カウスエは日本人にも馴染める味わいだろう。

一般的なミャンマー料理もあり、ヒン(カレー)各種や、ラペットゥ(お茶の葉を発酵させたサラダ)、モヒンガー(ナマズで出汁をとった米麺。ミャンマーのソウルフード)なども揃う。ついでに言うと竹虫やらコオロギ、セミといったブツも、ミャンマーからの入荷があれば出している。

『孤独のグルメ』がきっかけで日本人が増えた

僕も、実は常連である。ミャンマービールを飲みながら高菜炒めなどを食っているのだが、最近は日本人の姿もやけに増えたなあと思う。いつ来てもミャンマー人オンリーの食堂だったのだが、日本人が多くなった。

というのも、かの大ヒットテレビドラマ『孤独のグルメ』(テレビ東京系列)に登場したからだ。松重豊さん演じる井之頭五郎がラペットゥやシャン風の豚肉と高菜漬け炒め、牛スープの麺などを食べる姿は、放映時間が小腹の空く深夜だけあってまさに「夜食テロ」。いったいシャン料理とはなんぞや、と興味を持った視聴者が、次々と足を運ぶようになったのだ。

レストランだけでなく、食材店も多い。「ノング・インレー」が入居するビル「タック・イレブン」の上階には、いくつかのミャンマー雑貨屋が並び、完全にアジアンワールドと化している。ラペットゥ、乾燥させた高菜、噛みタバコ、ナマズのふりかけ、ミャンマーのお菓子、カップ麺、調味料、ハーブ類、コメ……アジアの市場に潜り込んだかのようで、とても日本とは思えない。

「タック・イレブン」上階のミャンマー食材店。お店の中にはほとんど日本語の商品がない(撮影=室橋裕和)

「お客はミャンマー人やインド人が多いけど、アジア好きの日本人や、アジア系のレストランで働く人が食材を探しに来ることもありますよ」

とは8階にある店の店員ウィンさん。なお9階と10階にも食材店があるが、上に行くほど安くなるのだというから面白い。