平成を代表する経営者・稲盛和夫。「利他の心」から発した数々の挑戦は、現在のKDDIの創業など卓越した成果を残している。そのエッセンスはどこにあるのか。稲盛氏を知る3人に聞いた。第3回は、稲盛氏らと第二電電を創業した千本倖生氏――。(全3回)

なぜ「大義」を第一にするか

初めて稲盛さんにお会いしたのは、電電公社の職員だった40歳のときのこと。当時私は、主に関西の経営者に対して、来る情報通信革命で社会がどう変わるかを説明する役割を担っていました。一方で、巨大な官営企業一社が通信事業を独占している状況は健全ではないという問題意識を持ち、対抗できる民間企業をつくりたいという秘めたる思いを抱いていました。

そんな矢先、ある講演会で出会ったのが、急成長企業として注目を集めていた京都セラミック(現京セラ)を率いる稲盛さんでした。何度か話をし、稲盛さんの経営哲学や経営手法を知るうちに、「この人なら自分の考えを理解してくれるだろう」と確信するようになりました。そこで思い切って「電電公社に対抗する民間の通信会社をつくりませんか」と切り出したのです。

電電公社という巨象に徒手空拳で立ち向かう。そんな夢物語、普通の経営者なら聞く耳さえ持たなかっただろうと思います。しかし稲盛さんは、同様の思いをすでに持っておられ、熟考の後に「ぜひやろう」と立ち上がってくださいました。なぜでしょうか。この挑戦には「大義」があったからです。