ハウス食品も「夏カレー」を始めた
同じ2011年には、ロイヤルホストにとって追い風も吹いた。家庭用のカレールー、レトルトカレー最大手のハウス食品が、レトルト商品で「夏のカレー」を発売したのだ。
「きっかけは、毎年夏になると、当社のお客様相談センターに『(室温が上がるので)レトルトカレーを温めないで食べてもよいか?』という、消費者の問い合わせが増えたからです。そこで、温めずにそのままごはんにかけてもおいしいレトルトカレーを、夏期限定で発売するようになりました。好評につき、2015年からは『旨辛キーマカレー』を追加投入しています」(ハウス食品グループ本社、広報・IR広報課の前澤壮太郎さん)
同社は「ハウス バーモントカレー」「こくまろ」「ハウス ジャワカレー」といった主力のルー商品でも「夏に効くカレー」などのフレーズで広告訴求してきた。家庭用食品メーカーなので訴求内容は違うが、最大手の展開も「夏はカレー」の浸透につながったのだ。
毎年25人の調理職を採用し、各店にコックがいる態勢に
ロイヤルホストは、競合の「ガスト」「ジョナサン」(すかいらーくグループ)や「デニーズ」(セブン&アイHD)、「ジョイフル」などとともに、ファミリーレストラン(ファミレス)に位置づけられるが、競合に比べて少し上質感がある。理由のひとつが、調理職採用だ。
2002年に一度凍結したが、2006年から本格的に再開。現在では毎年、調理職を25人程度採用している。他社は調理のレベルによって質が変わることを嫌い、店舗には調理職を配属しないことが多い。一方、ロイヤルは店舗にコックを配属することで、セントラルキッチンだけでなく、店舗での調理にも力を入れている。
「シェフの作り方」を工場で再現
今回、福岡県のロイヤルHD本社にも伺い、本社に隣接する福岡セントラルキッチン工場を見学した。工場長の江頭裕輔さんの入社は1983年。カレーフェアと“同期”だ。亡くなった創業者と同じ名字だが、血縁関係はないという。江頭さんは「カレーは工場で作り、熟成することで全体のバランスがとれ、おいしくなる」と話し、こう続ける。
「工場には600リットル釜が8機、400リットル釜が6機あります。多品種少量生産に対応でき、ドリア・グラタン、機内食、カレーやシチューなどもここで製造。家庭用ミールも手がけています。レストランのシェフの料理法を工場の釜で再現するのです。ステーキなどは店舗で調理しますが、カレーなどは工場で作るのでいつ食べてもおいしいはずです」(江頭さん)