機内食納入は1951年からスタート
取材陣も見学者用制服を身に着け、手指を徹底洗浄し、エアシャワーを浴びた上で、主力事業のひとつである「機内食」などの製造工程も見た。手作業が多く、細やかな気遣いが求められる現場だった。
「各航空会社は差別化に注力し、有名シェフとのコラボメニューにも積極的です。以前ならビジネスクラスに提供した内容の機内食も、エコノミークラスにも広がってきました」
同工場・商品企画課課長の三浦証さんがこう説明してくれた。
ちなみに、ロイヤルは1951年に板付空港(現・福岡空港)で食堂・売店を出店し、機内食納入も開始した。カレー製造を早くから手がけたことが、後年の「カレーフェア」に結実したという。
「ロイヤルホストは元カレです」
ロイヤルホストが低迷していた2000年代、同社が消費者アンケートをした際に、こんな回答があったという。
「ロイヤルホストは、元カレです」
「時々見かけたり、話題になったりすると、どうしているかと気になったりする」
というコメントだったそうだ。
長年、消費者取材を続けて感じるのは、外食の場合「高度成長期に定着した洋食メニューは強い」ということだ。カレーはもちろん、ハンバーグやスパゲティには根強い人気がある。スポーツ競技に例えればレギュラー選手だ。これだけ食生活が多様化しても、新人選手(新たな料理)は、なかなかレギュラー陣を切り崩せない。
低迷期に「元カレ」と発言したお客は、いまどうなっているだろうか。筆者は「1周回って、ロイホに戻ってきたのではないか」と思う。「あの人(店)と付き合って、私は幸せだった」と思われるクオリティーがあったことは、たしかな財産だ。あとはそのレベルにまで再び質を引き上げればいい。
多くの人は思い出の1ページに「夏のカレー」を記憶しているだろう。地道にフェアを続けてきたロイヤルにとって、いまが収穫期なのかもしれない。
経済ジャーナリスト・経営コンサルタント
1962年名古屋市生まれ。日本実業出版社の編集者、花王情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。「現象の裏にある本質を描く」をモットーに、「企業経営」「ビジネス現場とヒト」をテーマにした企画・執筆多数。近著に『20年続く人気カフェづくりの本』(プレジデント社)がある。