そもそも安くない可能性がある最低価格保証
最低価格保証は、家電量販店やスーパーマーケット、ネットの旅行サイトなどで、「他店よりも高ければ値下げします」という文言とともに見かけたことがあると思います。顧客側から見れば、とりあえずこの店にくればわざわざ自分で価格比較のためにたくさんの店を巡る必要はないというメリットがありますし、店舗側にとっても、競合店の価格調査を自らの労力をかけて完璧に行わずとも、消費者が肩代わりしてくれるというメリットがあります。
しかし、実はそれ以外に、複数の受け手に対して、それぞれ違ったメッセージを同時に発していたことをご存じでしょうか?
まず、これから買おうと思っている人に対しては、「当店はどこよりも安いので、ここで買えば間違いありませんよ」という意味で、新規顧客や潜在顧客を誘引する役目を果たしています。同時に、すでにこの店で買った顧客に対しては、「もっと安く売っている店があったと、あとで後悔することはありません。あなたは正しい選択をしたのですよ」というメッセージにより、顧客満足度を高める効果があります。たとえ顧客が「他の店の価格を十分に調べないで買ってしまったかな?」などと自身の購買に対して不安を抱いていたとしても、それを解消させる役割を担っているのです。
ここまでは消費者に向けたメッセージととらえることができるのですが、実は最低価格保証は競合店に対して「値下げ競争は無駄だからやめましょう」という暗黙の価格カルテルを発信しています。したがって最低価格保証がある場合の方が、市場価格が高いレベルに落ち着く傾向があります。
さらに、ポイントや無料延長保証の有無、キャンセルポリシーの違いなど、価格の構造自体が複雑化しており、同一条件下での価格比較ができずに最低価格保証に該当しないケースも多々あります。
「現金値引き」と「ポイント付与」はどちらが得か
たとえば同じ商品を店舗販売とネット販売で比べると、圧倒的にネット販売の方が安い金額を提示していることがあります。その値段を量販店に伝えると、現金値引きではなく、ポイント付与での対応を提案するケースもあるでしょう。では、消費者にとって現金値引きとポイント付与、どちらが得なのでしょうか?
ポイントを単純に金銭と見なして、同じ値引率(還元率)で比較すると、実は現金値引きの方がお得になります。たとえば、1万円の購買に対して10%の値引きだと、9000円となります。
一方、10%ポイント付与があった場合、考え方としては1万1000円分を1万円で購入したということになりますが、実は実質値引き率は約9.1%(=11000分の1000)であり、10%より少なくなるのです。この差は還元率が高くなるにしたがって広がり、100%の還元率は50%の値引きと等しくなります。
あるスーパーマーケットのID付きPOSデータを用いた2007年の分析では、1%の値引きが3.3%の販売増加を生んだのに対して、1%のポイント付与は12%の販売増加をもたらしたことが報告されています。つまり同じ還元率(値引率)であれば、ポイント付与は現金値引きの3.6倍、販促効果があったのです。