「闘って社会を変える」という態度を伝えたい

上野千鶴子、雨宮処凛『世代の痛み――団塊ジュニアから団塊への質問状』(中央公論新社)

団塊世代はよいことも悪いこともした。そのなかから悪いことを拒否して、よきものを受け取ってほしいと思う。そのよきもののひとつに、「闘って社会を変える」という態度がある。惨憺たる敗北をしたが、少しは勝利もした。やらないよりやったほうがよかったことはたくさんある。

今さまざまな社会運動の担い手たちは、世代交代の時期にあって、後継者問題に直面している。手渡したい知恵やノウハウはいっぱいある。だが、差し出した手は、振り払われるかもしれない。あらゆるコミュニケーションと同じく、コミュニケーション障害は伝える側と受け取る側の両方に責任がある。

わたしは子どもを産まなかったが、わたしの世代が育てた子どもたちに生き延びていってほしいと思う。できれば幸せに、生きてほしいと思う。その次の世代についてもそう思う。すべての時代は過渡期で、すべての世代は道半ばで斃れるだろう。自分の前に連なるひとびとの群れと、自分の後に連なるひとびとの群れとに気づく時、わたしたちには責任が生まれる。それに気づくのに、次の世代の40代はじゅうぶんな年齢だろう。

上野千鶴子(うえの・ちづこ)
社会学者
1948年富山県生まれ。父は開業医で母は専業主婦という家庭で育ち、京都大学大学院社会学博士課程修了。文学部哲学科社会学専攻卒業。平安女学院短期大学、京都精華大学などの助教授、ボン大学、コロンビア大学客員教授などを歴任し、1993年東京大学文学部助教授。1995年東京大学大学院人文社会系研究科教授。現在は東京大学名誉教授。認定NPO法人「ウィメンズアクションネットワーク(WAN)」理事長。女性学・ジェンダー研究の第一人者として知られ、著書『スカートの下の劇場』『家父長制と資本制』『おひとりさまの老後』『女ぎらい』『世代の痛み』(共著)など。趣味はスキーとドライブ。最近、映像の力に目覚め、編集作業と格闘中。
(撮影=中央公論新社写真部)
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