そんな経営者に限って、分不相応な高級スーツや高級腕時計をこれ見よがしに身につけていたりして、仕事に対するヤル気や金銭感覚も疑いたくなるそうだ。「また、趣味や道楽の話に花を咲かせたり、自分の株投資や不動産運用の相談ばかりしたりする社長も、経営者としての資質を疑いたくなります」と平野さん。
負債10億円の会社に、新規融資をしたワケ
また、新田さんは「融資をしたくなる社長かどうかは、会社の現場を見れば、一目瞭然です」と語る。経営者にとって、会社は手塩にかけたわが子も同然であり、自分自身の“映し鏡”でもある。会社に人生を懸けている経営者なら、その生きざまや姿勢が現場にも浸透するものだと新田さんはいう。
「融資をしたくなる会社というのはたいてい、社長が“現場大好き人間”なのです。仕事に自信と誇りを持っていて、社長のほうから『ぜひ、うちの工場を見てよ』といった具合に、誘われるケースも多い。実際に工場や店舗を見ると、隅々まで整理整頓されていて、トイレまで掃除が行き届いている。社員も元気に働いていて、その会社の生産性の高さもわかります」
融資をしたくない社長というのは、それとは真逆のパターンだ。「たまに社長が現場の見学を、口実を設けて断ってくることがあります。それでも粘って見せてもらうと、工場や店舗が雑然としていて雰囲気も暗く、生産性が低そうなことがわかります。社員のヤル気のなさも歴然としています」と平野さんはいう。
さらに平野さんは、先の経営者の身だしなみも重要なチェックポイントにしており、「私が融資したいと考える経営者のほとんどは、無闇に着飾ったりせず、こざっぱりした身なりをして、実直な雰囲気の方ばかりなのです。メーカーの社長なら、作業服などを着込んでいます」と話す。
その一方で村上さんが、地銀の審査基準では融資が難しい企業だったが、社長の人となりや立ち居振る舞いを見て、「この社長なら」と信用し、融資を実現させた体験談を披露してくれた。その企業は、実質的に経営破たんした建設会社。地元の有力企業だったが、前社長がどんぶり勘定の放漫経営を続け、売上高が20億円なのに、10億円もの負債を抱えてしまったのだ。
「再建を引き受けたのが、社長の弟さんでした。自身も自動車部品メーカーを営んでいましたが、創業家の一員として後を継いだのです。新社長は私財を負債の返済に充てたうえ、社員の前で会社の経営実態を説明し、創業家や社長自身の責任も明確にして、再建への協力を求めました。身内の恥をさらすのもいとわなかったわけで、なかなかできることではありません。私は経営者としての度量の大きさを強く感じました」