「テキトー」に見える60点主義がすこぶる機能している

このように21世紀型産業においては、日本人の目には「テキトー」に映ってしまうインドの「60点主義」のほうが、きちんと機能するケースが多くなっている。現に、グーグルやマイクロソフトなど世界的企業が、どんどんインドに研究開発拠点を設置。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/GCShutter)

一方、国内のベンチャーにおいても、2013年に起業し、瞬く間にインドのホテル最大手となった「OYO」(オヨ=しかも主な資金調達先はソフトバンク・グループ!)や、配車アプリ大手の「Ola」(オラ=しかも、こちらも主な資金調達先はソフトバンク・グループ!!)といったユニコーン企業が続々誕生している。

それらの企業は、日本のスタートアップと比べてもスケール、勢いがケタ違いだといわれている。これも「60点主義」あってこそなのだ。

彼らは60点のものをリリースすることを、まったく恐れない。当然60点の商品やサービスだから、クレームや悪評を受けることもあるが、彼らは「反省」することはあっても、決して「萎縮」したりはしないのだ。

儲かりそうならすぐ動く、問題発生したらオンタイムで解決する

ここまで見てきたように、インドにおける富裕層をはじめとするビジネスパーソンの考え方は基本的に「60点主義」だ。まとめると次のようになる。

●「儲かりそう」ならすぐに動く
●とにかくまずやってみて、問題が発生したらその都度オンタイムで解決する

もちろん、こういったインドの「60点主義」は、拙速に動いたがゆえの失敗と表裏一体である。だが、拙速かどうかはあくまで結果論にすぎない。それより、まずはスタートを切ることにより、日々変化する経済事情・市場環境にもタイムリーに対応することができ、目の前のチャンスを逃さずにとらえられるのだ。

一方、常に100%準備できてからでないと、あるいは常に100%成功することが見込めてからでないと、プロジェクトが動かず予算も下りない日本の「100点主義」は、実は企業だけの問題ではない。もっと身近な私たち個々人の日々の生活や人生にまで、意外な悪影響を及ぼしている。

(写真=iStock.com)
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