日本でまん延しているのが「100点主義の研究開発」

実は研究開発系の現場でも、日本の基準とインドを含むグローバルスタンダードの間にズレが生じている。いま、日本でまん延しているのが「100点主義の研究開発」。言い換えると「失敗がない研究開発」である。

本来、研究開発は失敗のうえに成り立つもの。しかも1回や2回どころではなく、何度も何度も失敗を重ねていくなかで、ようやく大きな成功を得られるたぐいのものだ。

このように「失敗しないと成功しない」という前提があるにもかかわらず、「100%成功する研究開発」を求めるため、日本では結果として「研究開発の成果を外部から買ってくる」という方法が主流になりつつある。そのため、熱意あふれる理系人材が日本企業に失望して外資系企業に転職したり、企業内の研究開発のための体制自体が潰されたりしつつあるのだ。

インドに世界中からじゃんじゃんお金と技術が集まる理由

かつて、ある日本からのビジネスツアーに同行し、デリー郊外にあるインド系製造業の工場を見学したときのこと。

各工程をつぶさに見学したが、正直、日本の製造業の完璧さを知っている私たちからすれば、至るところに工具や消耗品が散らばっているなど、その工場のレベルはかなり低いように思えた。

新製品の研究開発部署も見せてもらったが、そこも清潔さや整理整頓の面からいっても、日本企業よりはるかに劣る。ツアーに同行していた日本人も皆、顔をしかめていた。

ところが、工場の責任者から話を聞くと、そうした「乱れ」にも理由があることがわかる。彼ら研究開発部署の研究員は、思いつきレベルの話でもすぐに行動に移すし、実際に作品ができれば、いち早くそれを工程で反映させるように猛アピールするのだ。いちいち、工具が転がっていることなど気にもとめない。

野瀬大樹『お金儲けは「インド式」に学べ!』(ビジネス社)

もちろん彼らは、会社のためだけでなく、アピール攻勢によって自分の給料を上げたいという思いもあるだろう。ただ、こうした「思いつき」→「実行」のスピード感を目の当たりにした際、ふとあることを思い出した。

「そうだ! このスピード感は、かつて次々と世界を席巻するプロダクツを生み出していった、まさに本で読んだ昭和の日本企業そのものではないか」

工場長も「研究開発なんだから、ミスはしゃーないやろ」というスタンス。必要な原材料、資材が安価で、理系人材もどんどん採用できるという日本との前提条件の違いはあるものの、研究開発分野でも驚くほどアグレッシブだと認めざるを得ない。