日中欧、三大地域の空調売上高の推移
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日中欧、三大地域の空調売上高の推移

15年ぶりの減益という緊急事態を目前にして、号令には十分すぎる真実味と深刻さがあった。

ところが、半信半疑で市場調査をしてみると意外にも新たな「気づき」があった。同社はこれまでもマルチエアコンによる暖房は行っていたが、中国は東西南北で気候風土が大きく異なる。寒冷地の華北ではエアコン暖房では間に合わず本格的な暖房が必要。燃焼式暖房(ガスや石油)が主流な中、自分たちはエアコン暖房の特徴を華北でも訴求していた。

プロショップ(同社の提携専売店)への聞き込みでも、彼らはすでに暖房に着目し、他社の暖房商品を販売していたこともわかり、目からウロコが落ちた。

とてつもないビジネスチャンスにつながるのではないか――。

3カ月に1度は中国を訪れ、現地幹部を集めて1日中会議を開くというほど中国に期待をかける会長・井上の「中国は世界のモデル地区。中国で通用すれば、世界中どこでも通用する」という声もずしりと胸に響き、佐々木は暖房事業へと大きく舵を切った。

「とにかく動け。動くしかないんや」

09年初めからマーケティング、営業、商品開発をほぼ同時にスタート。開発担当者を欧州に派遣し、欧州で販売中の「ダイキン アルテルマ」(暖房・室内給湯・冷房の三役をこなすヒートポンプ式温水暖房機)を中国仕様の暖房商品として改良すべく怒涛の日々が始まった。ヒートポンプとは大気中から汲み上げた熱を圧縮して高温にし、その熱を暖房に利用する技術のこと。環境意識が高まっている中国でも注目されることは間違いなかった。