「チマチマした拡大では追いつけへん!中国が全世界を引っ張るぐらいの気概で(暖房事業を)やるんや」
世界中が震撼したリーマン・ショック後の2008年末。全社の業績が急降下する中、中国・上海市内にある大金中国投資の会議室にはピリピリとした空気が漂っていた。董事・副総経理の佐々木正行らが会長兼CEOの井上礼之以下、本社幹部たちから檄を飛ばされていたのだ。
今世紀に入ってから年率10%以上の高い経済成長を誇ってきた中国。1995年から拠点を置いてきた同社では、これまでマルチエアコン(一つの室外機で複数の室内機を使う形式)で業績を伸ばし、ビル用では中国で50%以上のシェアを獲得してきた。08年には中国エアコン最大手の珠海格力電器と提携。昨年は共同でインバーター搭載エアコンを発売するなど事業を急拡大している。
地域別売上高(空調)で見ても、中国は09年度に1300億円と、05年度の2倍以上の右肩上がりで推移。10年度は前年度比125%増の1600億円を計画するなど、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いだ。
だが、本社からはエアコン路線の拡大よりも暖房事業の着手を言い渡された。立ち上げから中国に携わってきた佐々木にしてみれば「まだやるべきことがあるのに……」との思いがあった。
しかし、幹部の期待は異常といえるほど大きかった。「通常の右肩上がり程度では許されない。世界一のエアコンメーカーになるために本格的に暖房事業を強化し、中国から活路を見出していくのだ、との厳命だったのです」(佐々木)