トヨタが「ハイブリッド」の特許公開を決断したワケ

すでに、トヨタはソフトバンクと共同でMONET Technologiesに出資した。また、トヨタは、世界のITスタートアップ企業と提携し、IoT(モノのインターネット化)などCASEの実現に必要な要素を取り込んでいる。トヨタはこれまでの成長をもたらしたハイブリッドシステムに関する特許の公開も決断した。

トヨタは自社のテクノロジーが使われる機会を増やし、新しい移動の基盤を提供する企業(モビリティーのプラットフォーマー)になりたい。トヨタのハイブリッドテクノロジーは、大気汚染問題に直面する中国などにとっては喉から手が出るほど欲しいものだ。それを自ら公開することで、トヨタは各国との関係を強化し、CASEに必要な要素の取り込みを加速させようとしている。

このように考えると、自動車の常識は大きく変わり始めている。自動車企業は、従来にはない移動のコンセプト、そこから得られる満足感を創出することにチャレンジしている。その取り組みを促進するためには、政府が各企業の要望などを聞き、実証実験の空間や、先端テクノロジーの実用化を可能にする規制緩和などを積極的に進めなければならない。

わが国が自動運転技術をはじめCASEの開発競争に適応し、成長を実現するには、人々のさらなるチャレンジを引き出すルール作りが欠かせない。

真壁 昭夫(まかべ・あきお)
法政大学大学院 教授
1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員、信州大学経済学部教授などを経て、2017年4月から現職。
(写真=時事通信フォト)
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