レベル3の「アウディA8」が、レベル2に下がる日本
レベル3の自動運転では、高速道路などの特定の場所において、システムがすべての運転を行い、緊急時は人間が運転操作を行う。すでに2017年、独アウディはレベル3のシステムを搭載したモデルA8を発表した。
ただ、わが国では法制度が未整備であったためアウディは人間による運転を前提としたレベル2に抑えて発売している。改正法により政府は企業の先進的な取り組みにキャッチアップしたい。それでも、インフラ整備や自動運運転に対する社会の受容度という点で、わが国は欧州各国や米国に後れを取っている。
これは、軽視できない。わが国をはじめとする主要先進国にとって、自動車産業は経済成長を支える重要な基盤だ。組み立てのための労働需要や、3万~5万点に上るともいわれる部品の生産など、自動車生産は経済に無視できない影響を与える。
新聞を読んでいるときに運転を要請されたら?
経済の屋台骨である自動車産業が世界全体で大変革を迎える中、わが国は安全と信頼性を両立させつつ、CASEの実現に向けた法規制や競争環境を実現しなければならない。レベル3の実現を念頭に置いた改正法を成立させた意義はあるが、それに満足してはいられない。
政府には、さらに先のテクノロジー開発を見越して、法制度の制定に向けた議論や、民間の実証実験への支援を期待したい。レベル3は、基本的に人間による操作を必要とする。レベル3の自動運転車両の場合、緊急時は乗っている人が操作を行わなければならない。システムがすべてを自律的に管理する自動運転ではないのである。自動運転システムが車を操縦している際に電話をかけたり、新聞を読むことができはするが、安心はできない。
見方によっては、レベル3には危ない部分がある。新聞を読んでいるときに急にシステムが運転を要請した際、とっさに状況を判断し、適切な操作を行うことは難しい。