撮影=遠藤素子

日本人は「情報」も含めて食べている

日本は鎖国の経験も長かったし、島国という地理的条件もあって、海外からの色んな情報を常に強く欲している傾向があるように思えます。だから情報文化が発達するのと同じで、食べ物も情報文化がつないで生まれた一つの多様性なんじゃないですか。「世界の各地を訪れることは難しいけど、向こうから入って来るものはいただくよ」みたいな感覚はあるんじゃないですかね。

――日本人は料理より、情報そのものを味わっているように見えます。

確かに、「みんながおいしい」と言っている時点で、実際に食べる前から自分の中の「おいしい」が2割ぐらい増していると思いますね。あとの8割は周りの雰囲気だったり、一緒に食べている仲間だったり、そして実際の味覚、という配分になるんでしょうかね。

ヤマザキマリ『パスタぎらい』(新潮社)

――他人の味覚を信用する傾向があるのかもしれません。

そこはすごく日本人らしいなと。イタリア人はそれがないですね。他者が言っていることを単純に信じたり、比較したりする傾向が日本人ほど強くないですから。「うちはうち」というのがあって、その考え方はもちろん彼らの生き方全てに反映されている。

シャンパンなんかも「世界では極上の酒って言われるけど、正直そんなにうまいとは思えないよな、うちの地域の発泡酒のほうがうまいよな」などと言う人が普通にゴロゴロいる。そこが、長いものに巻かれがちな日本との分かりやすい違いかもしれません。

 
ヤマザキマリ
マンガ家
1967年生まれ。17歳でフィレンツェに留学。97年、マンガ家デビュー。2010年、『テルマエ・ロマエ』(エンターブレイン)で第3回マンガ大賞などを受賞。17年、イタリア共和国星勲章コメンダトーレ受章。著書は『プリニウス』(とり・みきと共著、新潮社)、『ヴィオラ母さん』(文藝春秋)など。