学会員の強い人間関係は「縦線」のおかげ

それと関連して重要なのは、政界に進出するのと並行して、組織のあり方に大きな変更が加えられたことである。

ほかの新宗教では一般的なことだが、創価学会も政界へ進出する以前は「縦線」によって組織されていた。

新宗教が信者を増やしていく場合、ある人間が布教して新しい人間を入信させていくのだが、新しい入信者は、その人間を入信させた信者が属している支部に加入する。これが縦線である。

そのメリットは、信仰のつながりの背後に強固な人間関係があるということにある。

ただ、入信させた人間と新しい入信者は、違う地域に住んでいるかもしれず、支部は、地域を基盤に成り立つものではなくなる。それでは、地域での活動が十分には展開できない。

それでも、信仰活動の実践にはさして支障をきたすことはない。集まるところさえあればいいからである。

地域を基盤としたつながりで、信仰が強固に

島田裕巳『親が創価学会』(イースト新書)

ところが、選挙の活動となると、地域でまとまって行動しなければ、票を獲得することができない。

そこで創価学会では、信仰のつながりによる縦線から、地域を基盤とした「横線」に組織を改めた。これによって、創価学会の組織は基本的に地域を単位とするようになったのである。

これが可能になったのは、同じ地域に住んでいる創価学会の会員の数がかなり多かったからで、それによって、創価学会の組織は地域共同体としての性格を併せ持つようになった。日頃の付き合いは会員同士に限定され、関係はより密接なものになった。これは、政界に進出したことの副産物で、創価学会の組織に、ほかの新宗教には見られない強さを与えたのである。

島田裕巳(しまだ・ひろみ)
宗教学者、作家
1953年、東京生まれ。1976年、東京大学文学部宗教学科卒業。1984年、同大学大学院人文科学研究科博士課程修了。放送教育開発センター助教授、日本女子大学教授、東京大学先端科学技術研究センター特任研究員を経て、現在は東京女子大学および東京通信大学で非常勤講師を勤める。主な著書に、『創価学会』(新潮新書)など。
(写真=時事通信フォト)
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