アラブの会社? 欧州では知名度ゼロ

<strong>全日本空輸 社長 伊東信一郎</strong>●1950年、宮崎県生まれ。74年九州大学経済学部卒業、全日本空輸(ANA)入社。99年社長室事業計画部長、2001年人事部長、03年取締役営業推進本部副本部長兼マーケティング室長などを経て、07年副社長。09年4月より現職。
全日本空輸 社長 伊東信一郎●1950年、宮崎県生まれ。74年九州大学経済学部卒業、全日本空輸(ANA)入社。99年社長室事業計画部長、2001年人事部長、03年取締役営業推進本部副本部長兼マーケティング室長などを経て、07年副社長。09年4月より現職。

全日空の国際線はこの3月3日で就航25周年を迎えた。昨年10月に行われた羽田空港の定期便枠の拡大もあいまって、国際線事業は順調に売り上げを伸ばしている。

航空需要はGDPの伸びとリンクしているといわれるが、少子高齢化で成長が頭打ちの日本と違い、アジアをはじめ海外には伸び盛りの国や地域がたくさんあるので、今後の成長の柱を国際線事業と見定めた。2月に発表した経営計画にも明確にそれを謳った。

その橋頭堡になるのが、同じ航空連合「スターアライアンス」のメンバーである全日空と米ユナイテッド航空、コンチネンタル航空の3社で始めた、米独禁法の適用除外としてこの4月からスタートするジョイント・ベンチャーだ。

運航ダイヤの調整や新路線の創設、料金設定の工夫などによって、利用者により高い利便性を提供する。全米から利用客を集め、太平洋を越え日本はもちろん、中国、アジアに運んでいく。日本や中国から北米へ行く流れもしかりだ。3社で収入をプールし、リスクを分担しながら続けていくので、これまでの航空連合という形よりもぐっと競争力が増すだろう。同じような取り組みをルフトハンザドイツ航空とも進めている。

成長するアジアには新路線を開設させる。今年に入って、成田からマニラ(フィリピン)、ジャカルタ(インドネシア)への就航を開始し、6月からは中国の成都にも飛ばす。マレーシアのクアラルンプール、ベトナムのハノイなどが次の候補地である。

もちろん事業を拡大するうえでのネックもある。たとえば、海外におけるわが社の知名度が低いことであり、これは早急に手を打たなければならない。

実はこの2月末、イギリスの日刊紙「タイムズ」に私のインタビュー記事が掲載されたのだが、そのタイトルが“ Selling the biggest airline you've never heard of .(規模は大きいけれど誰も聞いたことがない航空会社を売り込むということ)となっていて、苦笑いしてしまった。特に欧州において全日空(ANA)の認知度は日本航空(Japan Airlines)に比べて低く、Aで始まるからか「アラブの航空会社?」と誤解される始末だ。

われわれはまずアジアを代表する航空会社になることを目指している。航空会社の評価機関であるイギリスの「スカイトラックス」によると、全日空は現在四つ星であり、最高位の五つ星になるのが当面の目標だ。すでに五つ星を取っている航空会社はアジアに多く、シンガポール航空、アシアナ航空(韓国)、キャセイパシフィック航空(香港)、カタール航空、マレーシア航空、海南航空(中国)、キングフィッシャー航空(インド)など7社。これらをライバル企業としてベンチマークしている。