LCCの新会社では英語が公用語

コスト減ということでは、当社とは別会社だが、香港の投資会社と共同出資して、LCC(Low Cost Career=格安航空会社)を設立、今年下半期の就航に向けて着々と準備を進めている。拠点は関西国際空港で、国際線と国内線の双方の事業を予定している。

通常の航空会社とLCCはビジネスモデルがまったく違う。成功するか否かは、低価格を実現するためにどんな路線を選び、機材をどのくらい効率的に稼働させられるかにかかっている。関西は2000万人の人口を抱え、もともと価格に敏感な土地である。日本初のLCCができるとなれば大阪の経済界も支えてくれるだろうから、関空を拠点に選んだのは正解だろう。

LCCができると全日空と市場の奪い合いになるのではないか、という声もあるが、杞憂だと思っている。そもそも多少のカニバリゼーションは覚悟のうえであり、むしろ今まで飛行機に乗らなかった人のような新しい需要を掘り起こすものと期待している。

就航にあたって、国にお願いしたいのが規制緩和だ。乗降中の燃料補給は日本では禁じられているが、世界では当たり前のように実施されており、早く日本でも認められるべきだ。それもあって、既存のLCCの飛行機は1日12時間も稼働するのが普通だ。

海外の大手航空会社が同じようにLCCを傘下に持ったことがあったが、失敗しているものも多い。原因を探ると親会社の関与が強かったことが大きいとわかったので、今回はブランドもシステムも採用もすべて全日空と切り離す形にした。公用語も英語になるだろう。社長には三菱重工から全日空に中途で入り、中国に駐在していた経験もある井上慎一氏を選んだ。香港のパートナーの信頼も篤い。必ず成功させてくれるだろう。初就航を楽しみにしている。(このインタビューは3月3日に実施しました)

このたびの東北地方太平洋沖地震にて被災された地域の皆様、ご家族の方々に心よりお見舞い申し上げます。ANAグループは公共交通機関としての責任感のもと、福島や山形への臨時便の就航を含めて、被災地の1日も早い復興に貢献してまいります。
(荻野進介=構成 相澤 正=撮影)