世界と戦うため着陸料の値下げを!

アジアでナンバーワンになり、世界における認知度を高めるには、安全運航、定時運航はもちろん、機内・機外におけるサービスの質を向上させることで顧客満足度を高め、「乗るならANA」と言ってもらうことである。そういう人が増えていけば利益は自然についてくる。こうしたサイクルを地道に回しつつ、時にはあっと驚くプロダクトを投入することも必要だ。

たとえば昨年4月、いずれも成田との間を結ぶニューヨーク、ロンドン、フランクフルト路線に、インスピレーション・オブ・ジャパンと名づけた新プロダクトを導入した。ビジネスクラスでも完全フルフラットのベッドスタイルとなり、隣の人の足をまたがずとも全席通路にアクセスできるという先進的なシートが売り物だ。

明るいニュースはまだある。予定から3年以上遅れている米ボーイング社の中型旅客機787が、世界の航空会社に先駆けてようやくこの夏に納入される。世界が注目する新旅客機を世界で初めて就航させることができるわけで、ANAブランドを浸透させるための宣伝材料として有効活用していきたい。

787は国際線に使うと座席数200席未満の中型機で、何より燃費がいい。短い滑走路でも長い距離を飛べるのが特徴で、羽田から欧州や北米向けの国際長距離路線に戦略的に投入していく予定だ。

航空会社はさまざまな規制のもとで運営されている。世界に伍して戦える会社になるには国の協力が必要だ。国際的に見るとかなり割高な空港着陸料の値下げと、最近下がったもののまだまだ高い航空機燃料税の減税をお願いしたい。

日本に乗り入れる国際線の総座席数における日本の航空会社のシェアは20%足らずしかない。これは先進国で最も低いレベルの数値だ。全日空と日航で分け合っているわけだが、以前は日航がそのほとんどを握っていた。われわれがもっと国際線を飛ばしたかった時期にも手放さず、不採算路線にも便を飛ばし続けていた。さすがに最近になって整理を始めているが、国益に反していたと思う。

一方、グローバル競争に打って出ると、テロや紛争、感染症、原油高などのイベントリスクに晒されることになる。万一そういうリスクに見舞われても、収益を上げていけるよう財務を筋肉質にしておかなければならない。そのためには、ユニットコスト(1座席を1キロ飛ばすのに必要な経費)をできるだけ下げることである。そうすればユニットレベニュー(1座席を1キロ飛ばしたことで得られる収入)が上がっていく。中期的に、ユニットコストを約1000億円下げていく計画だ。

コストを下げるのに一番よい方法は航空機の稼働率をアップさせること。羽田空港の24時間化が昨年ようやく実現したが、仁川国際空港(ソウル)や香港国際空港、チャンギ国際空港(シンガポール)はとっくに24時間化していた。空港が昼間しか開いていないと、1機あたり数百億円もする飛行機が1日8時間しか稼働しない計算になる。24時間稼働しているメーカーの工場があるのに、同じ企業として歯がゆい気持ちがある。