「論理的に正しい」が支持されるとは限らない
4月11日、世界貿易機関(WTO)は、韓国が福島県などの水産物輸入を禁止している措置に関して、同国の措置を妥当とする最終判断を下した。当初、WTOはわが国の主張を認め、韓国の対応を不公正と判断した。今回、一転して当初の判断が覆された。「まさか、信じられない」と、想定外の結果にショックを受ける関係者は多い。
今回のケースで重要なポイントは、わが国の常識が必ずしも国際機関などの判断に通用するとは限らないということだ。それに加えて、わが国サイドの準備不足も露呈した。これは重要な教訓である。
国際社会では、わが国で論理的に正しいと考えられることが、常に支持されるとは限らない。国際機関などの判断を仰ぐときには、相応の根回しや事前の利害調整をしっかりと行わなければ、足をすくわれることもあるということだ。
わが国は、WTO上級委員会に対してしっかりと根回しを行い、利害関係者・関係国からの納得を獲得できたかを確認すべきだった。それが、今回の逆転敗訴の教訓を生かし、国力増強を目指すことにつながるはずだ。
昨年2月にWTOパネルが認めたポイント
WTO上級委員会は、わが国が提示したデータなどの正当性は認め、特定地域で取れた水産物が汚染されているという主張には科学的根拠がないという判断は変えていない。だが、わが国の「韓国の規制は不当」との主張は認めなかった。
2011年3月の原子力発電所事故を受け、韓国などが日本産の水産物などへの輸入規制を導入した。2013年9月に韓国は規制を強化し、福島周辺の8県すべてからの水産物の輸入を禁止した。2015年、わが国は韓国の措置が不当な差別であると考え、WTOにパネル(小委員会)の設置を求めた。
昨年2月、WTOパネルはわが国の主張を認めた。具体的に認められたことは以下の4点である。
② 韓国が周知義務(WTOルール)を遵守しなかったこと
③ 規制が恣意的・差別的であること
④ 韓国の措置は過度に貿易制限的であること
このうち①と②は客観的データだから覆らない。肝心の主張は③と④である。第一審は、日本の主張は客観的に正しく、韓国は禁輸を解除すべきと、因果関係を認めた。