①そもそも計画作りにかけた労力をほかに使ったり、あるいはある程度のところでやめて実行に移したほうが、良い情報、結果が得られたのではないかという単純な機会損失の可能性。

②計画ができた時点で安心してしまい、実行に移すエネルギーが残っていなかったり、実行は必ずされるものだと誤解する。

③計画が「聖域」化され、環境が変わり、計画時の前提が変わっているにもかかわらず、「計画どおりにしないといけない」ことが社内に強迫観念のように浸透し、無理に数字を作ったり、最悪の場合、粉飾をする。

④計画以外のチャンスがあっても気に留めないために機会損失が起こる。

機会損失は、なぜ生まれるのか

機会損失が生まれる最大の原因は、いつの間にか本当の目的がわからなくなり、優先順位を間違えること、そして「手段の目的化」です。その背景には、人間は見えやすいもの、わかりやすいもの、目立つものに引っ張られるという心理的なバイアスがあります。

図は「重要性と緊急性のマトリックス」です。左上の重要性も緊急性も大きい案件は、最重要ですから当然すぐに取り掛かります。問題は、右上の「重要性は大きいが緊急性の小さい案件」と、左下の「緊急性は大きいが重要性の小さい案件」のどちらを優先するか。本来は重要性で判断すべきですが、多くの場合は緊急性が勝ってしまいます。例えば、上司から「すぐ書類を作れ」と命令されると、それがたとえ「念のため」の書類だとしても、優先してしまうことが多いのではないでしょうか。それは、緊急性の大きい案件のほうが見えやすく、目立つからです。

また、手段が目的化しやすいのも、目的よりも手段のほうが目に見えやすいためです。手段の目的化は、他社を買収する際にもよく見られます。1度買収すると決めたら、どんなに金額が上昇しても買おうとするケースです。手段のはずの買収が目的化してしまっているのです。また、日本では「M&Aに◯億円使う」と宣言している会社がかなりあります。M&Aに真剣に取り組むというメッセージを発信している側面もありますが、一方で、その金額を使うこと自体が目的になってしまうかもしれません。

このように、手段は目に見えやすいため、つい手段を追求することで満足してしまい、本来の目的を見失ってしまうのです。そもそも何のためにやっているのか。そして、今やっていることがベストな手段なのか。この2つが意識から抜け落ちてしまうために、機会損失は起こりやすくなります。