ヘルスケア分野で非デジタル世代を取り込む

その一つが心臓病患者や高齢者を含むヘルスケア分野だ。アップルウォッチには「心拍センサー」という革新技術が搭載されている。

振り返れば2015年に登場した時のアップルウォッチは、フィットネスシーンでの利用にばかりに注目が集まり、ポストiPhoneと呼ぶには期待外れだった。

しかし、2017年にアップルウォッチを着けていた米国人男性が、異常に高い心拍数を検知してアラートを出したことで「命を救う」というニュースが報道されると、状況は一変した。さらに、2018年には米国人女性の命をまたしても救った。

これらのニュースにより、ハイテクと無関係だった人たちが関心を一気に強めていった。

医師もびっくりの“心電図計”を搭載

そうして2018年秋には、「シリーズ4」にヘルスケア分野の決定打ともいえる“心電図計”が搭載された。この心電図計はFDA(米国食品医薬品局)が承認したことで世間の注目が高まった。

これがどう生活に関わっていくのか。ふつうは病院に行って心臓の検査を受けても、「異常はありません」と言われて帰ってくるケースが多い。だが、アップルウォッチの利用者は心拍の異変を感じたとき、すぐに心電図計で測定できるので、そのデータが病院での診断の手助けとなる。

実際、アップルウォッチの使用者は以下のような体験をした。

46歳の男性は、ある日、胸の痛みを覚えて病院に行ったが心電図は正常で、医者からは「胸焼けだろう」と診断されて帰された。

ところが別の日の朝、自宅でアップルウォッチの心電図アプリを起動すると警告音が鳴る。それで病院に行ったものの駐車場がいっぱいで待合室も混雑していた。それでも、アップルウォッチで心房細動が検出されたと病院側に説明すると、即検査になった。

結局、医者は「あなたは心房細動だ」と診断を下した。そして、「アップルウォッチがあなたの人生を救ってくれた」と患者に告げたのだった。46歳の男性はその時まで心房細動がどんなものかよく知らなかったという。

さらに、「転倒検出機能」は高齢者とその家族にとってセーフティネットとなり得るものだ。内蔵したジャイロスコープと加速度センサーの性能がアップしたことで、着用者の手首の軌道を分析し、ユーザーが転倒したことを検知し、1分間以上着用者が動かなかった場合は、緊急連絡先に自動で連絡を入れてくれる。