一日の終わりは「小杉湯」で締めくくる

世間体や互いの境遇などを気にせず、湯けむりの中で裸同士の気取らない会話ができるのが銭湯の魅力。番頭をしながら、入浴方法や注意書きなどを親しみやすいイラストで描いている。

【塩谷】「熱湯と水風呂を交互に入る『交互浴』が人気です。(入浴方法を解説する)チラシもわたしが担当しています」

今の自分があるのは全て銭湯のおかげと語り、1日の終わりには必ず小杉湯で入浴してその日を終える塩谷さん。小杉湯はもはや「家風呂」なのだ。

小杉湯はもはや「家風呂」だ(写真提供=毎日放送)

建築図法を応用してイラストにする

塩谷さんは各地の銭湯をくまなく取材して主人に話を聞いている。この日訪ねたのは、以前からどうしても訪ねたかった千葉市検見川の「梅の湯」だ。

取材は営業前の1時間で迅速に行う。まずは測量からスタートし、浴槽それぞれのサイズからタイル1枚の大きさまでどこまでも正確に測っていく。

ここ梅の湯を訪ねたかった1番の理由は、男湯に描かれているペンキ絵にあった。岩手県陸前高田の「奇跡の一本松」の絵。店主によると、当初は1年で別の絵にするつもりだったが、千葉に住む東北の人たちに「忘れないでほしい」と懇願され4度も書き換えているという。そんな背景も温かなイラストに落とし込んでいく。

測量データから縮尺は60分の1と決め、A4サイズの紙1枚に男湯と露天風呂を収めることにした。大学院まで建築を学んだ塩谷。下書きには製図用の定規を使い、建物を斜め上からのぞき込む建築図法を応用していた。

物差しを使うと絵が硬くなるので、下書きで引いた定規の線を清書ではフリーハンドでなぞっていく。ペン画が完成すると水彩で色をのせる。色付けには彼女なりの愛情がこもっていた。

ペン画が完成すると水彩で色をのせていく(写真提供=毎日放送)