ロシア人も、忖度する

【菊澤】評論家の山本七平氏は、著書『「空気」の研究』で、日本の組織は空気に支配されやすいと指摘しています。確かに多くの日本のエリートは損得計算で動きがちであり、黒い空気を読んで、つまり忖度して行動しようとします。果たしてそれでいいのでしょうか。

【佐藤】個性的だといわれるロシア人も空気をよく読みます。例えば、ソ連時代の選挙は投票率が99%を超えていました。投票では投票用紙に1人だけ名前が書いてあって、それに反対の人は「×」をつけます。もちろん投票ではプライバシーが守られることになっていますが、投票所に居並ぶ選挙管理委員の中には、KGBや秘密警察がいるわけです。ですから実際に「×」をつける人はほとんどいません。ただ面白いのは、1%ほど「×」をつける人がいる。それが北朝鮮と違うところです。でも、そんな人は、当時のソ連社会ではバランス感覚の欠けた人間だと思われていたはずです。