ヒット商品を生むための着眼点

具体例を見てみましょう。

野々村健一『0→1の発想を生み出す「問いかけ」の力』(KADOKAWA)

チリス(Zyliss)というキッチンツールのメーカーがあります。この会社の顧客は料理をする人です。しかしあるとき、普段の自分たちのコアターゲットではない人たちに、自社の商品、具体的には包丁やピザカッターなどのキッチン用具を使ってもらいました。対象となったのは、高齢者と子どもです。

すると、彼らには共通点があることがわかりました。高齢者も子どもも指先が器用でないので、包丁を手のひら全体でつかもうとするのです。これはチリスにとって新たなヒントでした。

「どうすればキッチン用具を指先の力や器用さがない人でも使いやすくできるだろうか?」

キッチン用具を使う際、指先がおぼつかない人が手のひら全体を使いたがるということは、指先が器用に使える人も手のひら全体を使ったほうが、実は楽かもしれない――と気が付くことができたのです。

そうして誕生したのが、持ち手の部分が丸くて太いキッチン用具です。手のひら全体の力を使えるこのシリーズは、同社のヒットアイテムになっています。

これは「どうすればもっと売れる新しい商品をつくれるか?」といった問いかけからは生まれない発想だったと思います。

(写真=iStock.com)
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