※本稿は、野々村健一『問いかけが仕事を創る』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
「仕事ってそもそも楽しいものなんですか?」
新しいものをつくることは、楽しいことです。私はそう感じていますし、だからこそ、新しい事業なり、商品なり、サービスや体験を作り出したいという企業の方と一緒に新しいものをつくることを仕事にしています。
IDEO Tokyo(アメリカのパロ・アルトに本拠を置くデザインコンサルタント会社の日本オフィス)が立ち上がってからまだ間もない頃、衝撃的な体験をしました。日本の経済成長を牽引してきたあるメーカーに勤める方、50人ほどに調査の一環として話を聞いたときのことです。「仕事でのやりがい、楽しさをどのようなときに感じるか」を尋ねたのですが、最も多かった答えは「仕事ってそもそも楽しいものなんですか?」というものでした。「仕事は仕事なので、楽しいかどうかは別ですね」という言葉も、所属部門を問わず多くの方から聞かれた言葉です。
その会社の文化、風土に関係しているのかもしれませんが、日本を代表する、労働環境にも恵まれた大企業に勤める人たちによるそういった言葉は、正直ショックでした。起きている時間のうちの大半を占める仕事が楽しくなく、それをそういうものとして諦め、疑いを持っていないことは驚きでした。そして、その後多くの企業で同様の状況があることを知りました。
なぜ「仕事は苦行」と感じてしまうのか
しかし、仕事は楽しいものですし、もしそうでないなら、努力と工夫次第で楽しくすることができる、と私は思っています。
新しいことも、人に指図されて取り組むとなると苦行かもしれませんが、能動的に問いを立て、これだと決めて取り組む仕事であれば、楽しさで溢れるものです。やりがいを感じなかったり、楽しくなかったりするのは多くの場合、それが自分自身で立てた問いではなかったり、それに対して自身の創造性を自由に発揮できていないことが原因であることが多いのではないでしょうか。
今でも「仕事は苦行で然るべき」といったような意見が散見されますが、私はこれには反対ですし、もし本当に苦行と感じるのであれば、そこには疑問を呈すべきです。昨今、自身の仕事をより自分のやりたい仕事へと変貌させていく「ジョブクラフター」という人たちも注目されるようになってきました。私も数人こういった人たちを知っていますが、一方でなかなかそうもいかないという人たちがいることも事実です。