まず「他の人を手伝うこと」から始めてみる

大変な状況の中で働く人に「問いかけをつくって、自身の状況にも疑問を持つべきだ」などと伝えてもなかなか共感は得られないと思いますし、「そうは言うけど……」といった気持ちになるのではないかと思います。

人によっては、問いを立ててもそこから行動するのはとても勇気が必要なことですし、恐怖すら感じる人もいるかもしれません。しかし、少しでも何か変えたいことがある、あるいはあるかもしれないと感じた場合、動き出さなければ景色は変わりません。

そんなときはまず、「他の人を手伝うこと」から始めてみることを勧めます。

自分ですべてを背負うのではなく、何か新しいことに挑戦しようとしている人、創ろうとしている人、もしくはそういったグループでも良いと思いますが、そういった人をサポートしてみることから始めるだけでも様々なことが変わっていきます。

当たり前ですが、ネガティブな人の周りにいれば自分もネガティブになります。その逆もそうで、自分の周りにポジティブな人が多ければ自分もポジティブになっていきます。「たぶん無理」「きっとできない」「そんなに甘くない」などと、自ら可能性を手放してきたように感じているとしたら、そのように思わせる強い存在がどこかのタイミング、あるいは今も周囲にいることが大きく影響しています。

パソコンを見ながら話すビジネスチーム
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成功者が身近にいれば「自分も成功したい」と思う

子ども時代に持っていたほどの万能感を持つことは難しいかもしれませんが、大人になった今は、「本当に無理なのか」「できないのか」「自分が甘いのか」は、自分で決められます。また、「できる」と言ってくれるポジティブな人とだけ付き合い、ネガティブな人はできるだけ遠ざけることも自分の判断でできます。そして、ポジティブな人との関わりを増やす最も簡単な方法は、ポジティブな人を応援すること、自らの手を動かして手伝うことです。

IDEOの人事考課の項目には、「他者の成功を支える」という言葉があります。他人を成功させることが評価の一部になっているので、点数を稼ぐために誰かを支えようと考えている人もいると思うかもしれません。しかし、そんなことはありません。「他者の成功を支える」を考課項目として挙げているのには、別の大きな意味があります。

それは、「誰かを成功させようとする人の集まった組織では、速く広くクリエイティビティが伝染する」ということです。成功する人が身近にいれば、自分も成功したいと思う。何かを成し遂げた人が近くにいれば、自分も成し遂げてみたいと思う。だから、新しい何かに挑戦する誰かを応援し、手助けすることは、自分のためにもなるのです。

そして、そういった人の多くは“I’m helping a friend right now to……”(今、友人が◯◯するのを手伝っていて……)ということを仕事以外の場面でも口にします。